建築業の2024年問題...労働時間の上限規制が適用 求められる「働き方改革」「建設DX」に向け、期待のICTツールは?

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   人手不足、働き手の高齢化に見舞われている建設業。2024年4月には、建設業でも「働き方改革関連法」が施行され、労働時間の上限規制がスタートすることともあいまって、建設業における生産性向上は、喫緊の課題だ。

   そこで今、「建設DX(デジタルトランスフォーメーション)」による生産性向上、「働き方改革」が求められている。

   では、その実情はどうなのか――。産業用のリモートセンシングサービスを手掛ける、スカイマティクス(東京都中央区)では、建設業界の現状や、課題の把握を目的に、「建設DXに関するアンケート調査」を実施。2022年2月2日に調査結果を発表した。建設業界がかかえる課題とは?

  • ドローンは建設現場でどれくらい役立つ?(写真はイメージ)
    ドローンは建設現場でどれくらい役立つ?(写真はイメージ)
  • ドローンは建設現場でどれくらい役立つ?(写真はイメージ)

ドローンで取得した地形データを3D CAD等で活用

   今回の調査は、全国の建設業の企業に勤務する1039人を対象とした(内訳は、1人~19人の小規模企業の人が304人、20人~299人の中規模企業の人が340人、300人以上の大規模企業の人が395人)。

   まずは、勤務先で今後導入したい・導入してほしい建設ICT(情報通信技術)ツールについて、重要だと思う3つ(複数回答)を聞いた。その結果、最多は「ドローン」で26.0%、次いで「据置型三次元レーザースキャナー」(19.0%)、「マーキングや墨出しロボット」(18.3%)が挙げられた。ドローンへの期待は大きいようだ。【図1】

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【図1】今後導入したい・導入してほしい建設ICTツールは?(スカイマティクス調べ)

   では、実際に導入して、生産性の向上に寄与したものはあるのだろうか――。これについて、勤務先で生産性向上に寄与したと考える建設ICTツールのうち、寄与度の大きいものから順番に5つまで選んでもらった。

   その結果は、多い順に「ドローン」(23.2%)、「3D CAD、3次元データ作成・点群処理ソフト」(20.9%)、「CADデータのクラウド共有」(10.6%)、「据置型三次元レーザースキャナー」(6.1%)、「BIMソフト・CIMソフト」(5.9%)となった。【図2】

   同社は「この結果から、ドローンで取得した地形データを3D CAD等で活用することで生産性を向上させたケースが多いと想定される」と指摘する。

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【図2】最も生産性向上に寄与した建設ICTツールは?(スカイマティクス調べ)

勤務先が働き方改革・残業削減に着手...41.7% 小規模企業の遅れ目立つ

   一方で、建設業界の「働き方改革」が、進もうとしている。2024年4月、建設業でも「働き方改革関連法」によって、原則月45時間、かつ、年360時間以内の残業時間の制限が適用されるからだ。

   では、現状での「働き方」はどうなっているのか。調査では、勤務先がこうした働き方改革・残業削減の取り組みに着手しているかどうか聞いた。すると、全体(1039人)の結果では、「着手している」が41.7%という結果に。

   また、企業規模別に詳しく見ていくと、300人以上の大規模企業は60.0%、20人~299人の中規模企業は41.8%、1人~19人の小規模企業は17.8%だった。このように、小規模企業の取り組みの遅れが目立った。【図3】

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【図3】勤務先では働き方・残業削減に取り組んでいるか(スカイマティクス調べ)

   くわえて、勤務先のICT(デジタル)化の取り組みについて、どの程度満足(または不満)かを聞くと(「分からない・答えられない」を除いた母数で集計)、全体(836人)では、過半数の56.6%が「不満」(=「やや不満」と「不満」の合計)と回答した。

   こちらも、企業規模別に詳しく見ていくと、300人以上の大規模企業(351人)は46.5%、20人~299人の中規模企業(265人)は61.9%、1人~19 人の小規模企業(220人)は66.7%だった。【図4】

   同社は「特に小規模企業の従業員は、勤務先が生産性向上や働き方改革・残業削減を進めるために、ICT化(デジタル化)の取り組みを進めてほしいという要望が大きいと考えられる」とみている。

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【図4】勤務先のICR化(デジタル化)の取り組みの満足度(スカイマティクス調べ)

   また、建設ICTツールの導入がうまくいかなかった経験について聞いた質問では「若手社員など限られた人しか使えない」といった声が多いなど、ICTの導入への抵抗感は少なくないようだ。

   調査では、「勤務先が生産性向上のために建設ICTツールを導入するにあたり、ネックとなる要素は何か」を聞いた(複数回答)。それによると、最多の「初期費用」(55.5%)を筆頭に、「ランニングコスト」(41.0%)、「導入しても社員が使いこなせるか分からない」(35.4%)、「社内で導入を進めるICTに詳しい人材の不足」(33.9%)が、上位を占めた。【図5】

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【図5】建設ICTツール導入のネックとなる要素(スカイマティクス調べ)

   今回の調査を受けて、馬奈木俊介(まなぎ・しゅんすけ)九州大学大学院工学研究院 都市システム工学講座 教授/九州大学都市研究センター長は、次のように指摘する。

「建設業の企業がICTツールを導入する際のネックとなる要素も示されており、その結果、建設ICTツール導入を進めるためには、初期費用・ランニングコストが安価なツール、誰でも使いこなせるツール、ICTに詳しい人材がいなくても導入できるツールが求められているようです」

   また、ドローンは導入による生産性向上の寄与度が高い、未導入の企業でも導入意向が高いことに、「ドローンによる建設業の生産性向上への期待が高まっていることが示唆されています」とした。

「ドローンはそれほど高額ではありません。また、ドローンで取得した地形データを利用する上で、様々なソフトウェアがありますが、なかには安価で、誰もが使いやすいツールもあります。小規模企業こそ、生産性向上や働き方改革を推進するために、まずはドローンの導入を検討すべきです。ドローンの普及によって、建設業全体の生産性が向上することが期待できます」

   なお、調査は2022年11月21日~28日に実施した。回答者として、インテージ法人パネル「建築・土木系 技術職種」およびインテージ一般モニターに登録されている全国計2万人にスクリーニング調査を行い、勤務先が測量に携わる会社に勤務している会社役員・管理職・一般職であり、かつ、「測量」「ICT機器・ソフトの選定」「管理職の業務」のいずれかに携わっている人を抽出。1039人が回答した。

   スカイマティクスでは、クラウド型ドローン測量サービス「くみき」を展開中。同サービスは、ドローン画像をアップロードするだけでオルソ画像や3D点群といった地形データを自動で生成する。また、国産ツールで扱いやすく、専任のサポートチームもあるという。

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