フリーランスの働き方の実態...トラブルに見舞われ、収入低いけど、満足度は高い? 連合調査

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「好きなことを仕事にしたかったから」
「自分の専門性を活かすため」
「場所や時間にとらわれずに自由に働きたいから」

   ――そんなきっかけから、「フリーランス」として働く人は少なくない。

   俳優やミュージシャン、作家、漫画家、映画監督に演出家、デザイナー、コンサルタント、エンジニア、ベビーシッター、スポーツ・インストラクター......。

   フリーランスの立場で働く人はさまざまだ。こうしたことから、日本労働組合総連合会(連合、東京都千代田区)は、フリーランスの働き方を調査。2023年1月23日に発表した。

   フリーランスで働く人に、仕事の発注者や事業者とは業務内容のほか、トラブルを防止するうえでも、契約書を締結するよう促している。

  • フリーランスの働き方を調査(写真はイメージ)
    フリーランスの働き方を調査(写真はイメージ)
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収入での満足度の低さ際立つ

   調査では、全国の20歳以上の男女でフリーランスを本業として働いている人(1000人)に、「フリーランスとして働き始めたきっかけ」を聞いたところ、「好きなことを仕事にしたかったから」が32.5%で最も高かった。

   次いで、「自分の専門性を活かすため」の29.8%、「場所や時間にとらわれずに自由に働きたいから」が29.4%。「フリーランス以外に選択肢がなかったから」(16.8%)、「前職を退職したため(自己都合)」(15.3%)と続いた。

   世代別にみると、39.5%の20代が「場所や時間にとらわれずに自由に働きたいから」と答え、全体と比べて10ポイント以上も高かった。

   フリーランスとしての働き方に、「どのくらい満足しているか」聞いたところ、仕事全体では、「非常に満足している」が15.0%、「やや満足している」が 41.0%で、合わせた56.0%の人が「満足している」と答えた。

   一方で、「まったく満足していない」が5.1%、「あまり満足していない」が9.3%で、合わせて14.4%が「満足していない」だった。

   フリーランスとして働く人の多くが、満足感を得ながら仕事をしているようすがうかがえる。

   ただ、仕事の内容別にみると、満足している人、「暮らし・学び関連」で77.8%と高かった一方で、「営業・販売関連」では40.3%にとどまった。仕事の内容によって、満足度に差が生じていることも明らかとなった。

   さらに「仕事の内容や質」で63.6%、労働時間では57.5%の人が「満足している」と答え、半数を超えた一方で、「収入」に「満足している」と答えた人は27.9%と3割未満にとどまった。収入での満足度の低さが際立った。

   「働きがい・やりがい」に、「満足している」と答えた人は66.0%。「プライベートとの両立」では68.8%が「満足している」と、いずれも約7割を占めた。働きがい・やりがいを感じている人や、ワークライフバランスを整えることができている人は多いとみられる。

報酬、ハラスメント...トラブルを経験した人は46.1%

   調査では、フリーランスの働き方に「将来への展望はどのくらいあるか」聞いたところ、「とてもある」が14.4%、「少しある」が20.9%で、合計した35.3%の人が「(将来の展望が)ある」と回答。「まったくない」は10.2%、「あまりない」が16.9%で、合計した27.1%が「ない」と答えた。

   仕事の内容別にみると、「将来への展望がある」と答えた人は「理・美容関連」で51.5%、「からだ・健康関連」で52.2%を占めて半数を超えたが、「営業・販売関連」は27.8%、「クリエイティブ関連」は24.7%、「ものづくり・ものはこび関連」で26.5%と、3割未満にとどまった仕事もあった。

   そうしたなか、フリーランスとして仕事上でトラブルを経験したことがある人(461人)に、「経験したトラブルの内容」(複数回答)を聞いたところ、31.0%の人が「不当に低い報酬額の決定」と答え、最も高くなった。

   次いで、「一方的な仕事の取消し」が28.4%、「報酬の支払いの遅延」が25.8%、「一方的な仕事内容の変更」の25.4%、「報酬の不払い・過少払い」の22.8%と、報酬額をめぐるトラブルが多いことがわかった。【図1参照】

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図1 報酬をめぐるトラブルは少なくない(連合が作成)

   また、発注者や事業者と対等な関係を築けず、ハラスメントや精神的・身体的暴力を受けたことがある人(311人)に、「受けたことのあるハラスメントや精神的・身体的暴力の内容」を聞いたところ、25.1%の人が「契約で定めた範囲を超えた無理・無茶な要求」があったと回答。最も高くなった。

   次いで、22.8%の人が「仕事とは無関係のやりとりを過剰に行ってきて、疲弊してしまう」と答え、「仕事を外される」が22.5%、「きちんと仕事をしたにも関わらず、難癖をつけて報酬や消費税を支払ってくれない」が21.2%。「精神的な攻撃(脅迫・中傷・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)」と答えた人が20.3%と続いた。

少ない? 契約書を締結「いつもする」人は23.8%

   連合はこうしたトラブルを回避するために、フリーランスには仕事の発注者や事業者と契約書を交わすことをすすめている。

   コロナ禍の影響もあって、最近は書面や電子文書よりもメールやチャット、アプリで確認や合意を行なうケースが広がってきた。調査によると、メールやチャットなどで確認や合意を「行っている」人は72.3%、「行っていない」は27.7%だった。

   ちなみに、口約束(電話を含む)のケースは、56.0%の人が「行っている」と回答。「行っていない」は44.0%だった。なかでも、「ものづくり・ものはこび関連」は71.1%と最多。「理容・美容関連」の60.6%、「文化・芸能・芸術関連」の58.8%が多かった。

   フリーランスとして業務を受注する際の契約書の締結状況をみると、「いつも締結している」と答えた人は23.8%、「締結するときとしないときがある」が40.2%だった。「締結したことはない」と答えた人も、36.0%と3割を超えた。【図2参照】

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図2 「クリエイティブ関連」のフリーランスで契約書を「いつも締結する」人は15.6%と少ない

   業務を受注する際に契約書を締結しなかった経験がある人(762人)に、その理由を聞くと、「日頃の信頼関係があるため」と答えた人が43.8%と、突出して多かった。次いで、26.8%の人が「書面で契約しなくても、権利や報酬が保障され、円滑な業務遂行に支障がないため」と回答。また24.4%の人が「発注者から提示されなかったため」と答えた。

   「契約書をかわす慣例がなく、受発注側どちらにもその発想がないため」が23.6%、「契約書作成の負担が大きいため」の9.4%と続いた。

契約書の締結「かえって信頼を失いそう」...

   さらに、フリーランスの適切な報酬や権利を守るために、「書面で契約したほうがいいと思うか?」と聞いたところ、「そう思う」と答えた人は64.1%、「そう思わない」は6.4%だった。「わからない」は29.5%となった。

   「そう思う」と答え人を仕事の内容別にみると、「コミュニケーション関連」(86.4%)と「事務・ビジネス関連」(80.8%)が8割を超えて高く、「暮らし・学び関連」(75.9%)や「からだ・健康関連」(69.6%)が続いた。

   書面で契約したほうがいいと思わない人(64人)に、その理由を聞いたところ、

「かえって信頼を失いそう」文化・芸能・芸術関連)
「柔軟性が損なわれる恐れがある」(IT 関連)
「そこまでこだわると相手が嫌がり次の仕事を失う」(事務・ビジネス関連)
「書面を作成してもその通りに守られることがない」(クリエイティブ関連)

といった声があった。

   加えて、1000人の回答者全員に、「契約書の締結の普及・浸透のためにどのようなことが必要だと思うか」聞いたところ、47.6%の人が「フリーランスと取引する事業者への契約書面交付義務化の法整備(ルールを遵守させるための罰則の規程等)」と答え、突出して高くなった。

   次いで、「発注側の意識改革」と答えた人が30.2%、「標準契約書のひな型の活用」が29.3%、「契約書締結の必要性の周知や雰囲気の醸成」が27.4%、「充実した相談体制の整備」の24.6%が上位を占めた。

   受注に際し契約書の締結が促進、義務化されるような法整備の拡充が必要だと感じている人が多いとみられる。

   なお、「フリーランスの契約に関する調査 2023」は全国の20歳以上の男女でフリーランスを本業として働く人を対象に、2022年12月23日~27日にインターネット調査のネットエイジアを通じて実施した。1000人の有効サンプルを集計した。

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