市場の希望的観測が、インフレ収束を遅らせている
こうした結果をエコノミストはどう見ているのだろうか。
ヤフーニュースのコメント欄では、第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏が、
「12月の利上げ幅は0.50%でした。ここ数か月のインフレ率鈍化を受けて金融引き締めの手を緩めた格好です。依然としてインフレ率が高止まりしていることからFRBは利上げ方針を掲げていますが、おそらく3月FOMCにおいて追加で0.25%の利上げを実施し、そこで利上げは打ち止めになると予想されます」
と予測した。そして、
「政策金利は5.00~5.25%でしばらくの間据え置かれるでしょう。今後、中国経済の回復に伴う資源高、米国内での賃金上昇加速などインフレ率を再加速させる要因がどれほど強く発現するか注目されます」
と、今後のインフレ再加速に懸念を示した。
同欄では、ソニーフィナンシャルグループのシニアエコノミスト渡辺浩志氏も、
「米国のインフレは峠を越えるも、依然高水準。モノと家賃のインフレは沈静化が見えていますが、賃金と連動性の高いサービス(家賃除く)のインフレは楽観できません。
大手ハイテク企業で万人単位の人員削減が頻発する昨今ですが、米国にはまだ約1100万人の求人があります。空前の人手不足が続き、リストラされた人々もすぐに再就職できる状況。失業率はむしろ低下し、賃金上昇率は高止まりしています」
と、賃金インフレへの警戒を示したうえで、こう指摘した。
「それゆえFRBは『継続的な利上げ』を行う方針を示しています。市場は年内の利下げを期待していますが、希望的観測による時期尚早な金利低下や株高はインフレの沈静化を遅らせかねません。その警戒からパウエル議長は年内の利下げを改めて否定しました」