個人や企業が持つモノや場所、お金、スキルなどの有形・無形資産をインターネット上のプラットフォームを介して取引するシェアリングエコノミー。
2022年度の市場規模は、過去最大の規模となる2兆6158億円に達したことがわかった。さらに10年後の2032年度には、最大15兆円超にのぼると予測している。
369社の企業と111の自治体が加盟(2022年12月31日時点)するシェアリングエコノミー協会と情報通信専門のシンクタンクである情報通信総合研究所が2023年1月24日、共同で発表した。
普及の背景にSNS
シェアリングエコノミー協会によると、シェアリングエコノミーは取引される資産によって、空間(Space)、スキル(Skill)、移動(Mobility)、お金(Money)、モノ(Goods)の5つの領域に分類できるという。
利用者には、必要なモノやサービスを必要なときに低価格で利用することができ、「余計なものを持たない」暮らしができたり、多くの取引がキャッシュレスで決済できたりする。
一方、サービス提供者にも、初期費用があまりかからないなどのメリットが見込める。ただ、不特定多数とやり取りするために、取引時などにトラブルが生じるリスクや、消費者保護のルールなどに課題があるとされる。
さまざまなモノを共有することで成立することから、「共有経済」とも呼ばれる。
そうしたなか、調査によると2022年度のシェアリングエコノミーの市場規模は、2兆6158億円だった。1年前の21年度(22年1月18日発表)の市場規模は2兆4198億円だったので、「順調な成長をみせている」(情報通信総合研究所)としている。
10年後の2032年度の市場規模については、市場が現状のペースで成長した場合(ベースシナリオ)には8兆5770億円の市場規模に。また、新型コロナウイルスによる不安や、シェアリングサービスの認知度が低い点や個人が提供するサービス利用への不安などの課題が解決した場合(課題解決シナリオ)には、最大15兆1165億円にのぼる、とそれぞれ予測した。
ちなみに、これ(課題解決シナリオの予測)は2021年のコンビニエンスストアの販売額(11兆7601億円。経済産業省「商業動態統計」)の約1.3倍にあたる。
他の産業への経済波及効果は10年後10兆円
シェアリングエコノミー市場の成?で、「既存産業への経済波及効果」はどうか。シェアワーカー(シェアリングエコノミーのプラットフォームを通じた働き方の個人)の収?が増えることで、商品やサービスの購?が増えて既存の製造業やサービス業の売り上げが拡?するなど、新たな利用の広がりが見込まれる。
それにより、「既存産業への経済波及効果」は10年後の2032年度に、ベースシナリオで5兆4960億円、課題解決シナリオで9兆9045億円にのぼると予測。シェアリングエコノミーの成長が、既存産業へもかなりの好影響を与えることがわかった。【図表1参照】
さらに既存産業への経済波及効果を産業別にみると、2032年度の「サービス」で2兆1418億円、「製造業」で2兆822億円、「不動産」が1兆6296億円、「商業」の1兆3708億円(いずれも、課題解決シナリオ)と予測した。【図表2参照】
近年、シェアリングエコノミー市場が急成長する背景には、スマートフォンやタブレット端末の普及や通信環境の大幅な改善などの技術的側面が見逃せない。SNSの普及で、他人との情報交換やサービス提供者への評価などがタイムリー、かつ頻繁に公表されるようになったこともある。
もともと、日本社会に近隣同士での助け合いの文化・習慣があったことなどもシェアリングエコノミーの普及に寄与したと考えられている。
なお、調査は2022年9月29日~10月6日と10月4日~8日に、20代~60代の男女を対象に実施。プレ調査で4万52サンプル、本調査で2719人から有効回答を得た。
対象サービスは、インターネット上で資産やスキルの提供者と利用者を結びつけるもの、利用したいときにすぐ取引が成立するものとし、市場規模は資産・サービス提供者と利用者の間の取引金額と定義。プラットフォーマーの売り上げではない。