きょうは30代のHさんがいらっしゃっています。
「今の部署でビジネス環境が変わって新事業に進出する動きが進んでいます。新規事業に関わるのははじめてで、本なども読んで発想力について学んでいます。他にはどのような心持ちで臨んでいけばいいのでしょうか」
予定通り進まないことを想定しながら...
世の中のサービスを見ると、新しいサービスがたくさん出てきている一方で、「いつの間にかなくなっているサービス」もたくさんありますよね。ビジネス環境が変化しやすいこの時代では、新事業計画を立てても、目標や計画が予定通り進まないものだと前提に考えておくのがいいでしょう。
そのため、新規事業に対して、準備の学びをしていたとしても、事業自体が途中で打ち切りになってしまったり、違うものに変わってしまったりする可能性もあります。予定通りに進まないことを想定しながら、別の学びに切り替えていくことも必要なのかもしれません。
思考のクセに気づくには?
私たちの思考には、知らず知らずに思考のクセができてしまっています。
・こんなタイプの人はリーダーに向いていない
・営業が向いているのはこんな人だ
・うまくいくのはこのパターンだ
・こういった場合は失敗する
人間は生きている中で、周囲の環境に適応していくため、さらに効率を求めるため、うまくいくパターンを固定化させてしまっているのです。これが思考のクセです。
思考が固定化し過ぎてしまうと、環境の変化が起きた際に同じパターンを当てはめたり、対応できなくなったりしてしまいます。この思考のクセに気づくことが、まずは必要です。マーケットが変わった時に、これまでのやり方ではうまくいかないのもこのせいです。
自分の中で「~すべきだ」「会社ではこうだから」などが口グセになっている人は、思考が固定化している可能性が高いです。また、日々の仕事やプライベートに対して、「最近、同じことの繰り返してつまらない」「同僚と話す内容も同じ話ばかりで飽きてきた」など感じている場合も、日々の生活自体がパターン化しているといえるでしょう。そこで必要なのがアンラーンです。
「アンラーン」という新しい学びとは?
アンラーンとは、「学びほぐし」と訳されます。一般的な「学び」は、新しい知識や思考などインプットすることが重視されますが、アンラーンはすでに学んだ知識や思考を見つめ直すことを意味しています。
ビジネス環境の急激な変化に対して、学びも固執させてしまうと、変化に対応できない可能性が高まっているため、常識という思い込みを取り除くアンラーンの重要性が増してきているのです。
『Unlearn(アンラーン)人生100年時代の新しい「学び」』(柳川範之・為末大 共著、日経BP刊)では、アンラーンが「伸びしろ」をつくってくれると書かれています。アスリートからビジネスパーソンになった為末さんの体験をもとに、アンラーンの必要性にも触れられています。
いわく、普段から学びの伸びしろをつくっておけば、どんな変化が来ても、自由に対応できる体勢ができるのだそうです。うまくいっていたことがうまくいかなくなったタイミングに直面した時こそが、アンラーンが必要なタイミング。うまくいかなくなってからでは遅いので、自分の思考のクセに気づく意識は日頃から必要ですね。
Hさんも新規事業に携わる中で、自分のこれまでの思考のクセに気づかないでいると、自分の思考の中でだけで物事を対応、判断してしまうのではないでしょうか。柔軟な発想ができなくなってしまう可能性もあります。
新しい学びをスタートさせるには、新しいことの吸収も必要ですが、自分の思考のクセに気づいて先に伸びしろをつくっておきましょう。(ひろ子ママ)