高リスク金融商品「仕組み債」、トラブル相次ぐ...金融庁が問題視、金融機関は相次ぎ販売停止 問い直される「顧客本位」

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金融機関の販売実態調査が加速...かねてからの「問題」をようやく点検

   金融庁も対策に動き始めた。

   22年8月末に公表した22事業年度(22年7月~23年6月)の金融行政方針では、仕組み債を販売する金融機関の監督の強化を明記。金融機関の経営陣が取り扱いを続けるべきか否かを検討し、販売を継続する場合、その理由を聞き取るとした。

   これを受け、12月から地銀99行とグループの証券会社を含め、仕組み債の販売実態について、一斉調査に乗り出した。仕組み債以外の金融商品でも同様の問題がないかどうか調査し、地銀のコーポレートガバナンス(企業統治)の課題を総点検する方針だ。

   日本証券業協会も、投資勧誘などのガイドラインを見直す検討を始め、全国銀行協会も実態を調査している。

   批判や金融庁の監視の目の強化を受け、金融機関側も対応に乗り出している。

   有力地銀の千葉銀は22年8月から傘下の証券会社での仕組み債販売を停止。山口フィナンシャルグループ(FG)も10月に傘下2社での販売を止めた。横浜銀はグループの証券会社で個人向けの販売をとりやめた。

   メガバンクでは、三井住友銀が7月に個人向けの勧誘と販売を停止した。三菱UFJFGは11月から、銀行と証券で顧客層に応じて販売する商品を制限。

   また、証券業界では大和証券が9月、野村證券は10月から、個人向けの販売を原則として停止した。三井住友FGのSMBC日興証券も8月から個人向けは積極的な勧誘を控えている。ネット専業の楽天証券は、9月末ですべての仕組み債の取り扱いを停止した。

   ただ、仕組み債の問題は、今に始まったものではない。

   ネットの記事検索でも、たとえば2年前に「仕組み債、損失トラブル相次ぐ」(朝日新聞22年2月9日)などの記事があり、「証券会社は一般投資家に売るべきではない」という被害相談に乗る弁護士のコメントも掲載されている。

   今回、苦情が増え、社会問題化してようやく重い腰を上げたかっこうで、いかにも後手のそしりを免れない。新聞の社説も厳しく批判する。

「金融機関側は『リスクを説明した』などと反論するが、問われているのは説明の仕方だけではない。そもそも勧誘すべき商品だったかという点だ」(毎日新聞22年11月9日
「業界の規範として......『誠実・公正に業務を行い、顧客の最善の利益を図るべきだ』と定めている。その約束をもう忘れたのだろうか」(読売新聞22年12月23日

   金融機関の「顧客本位」が問い直されている。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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