インフレピークアウトと同時に、本格的な経済悪化の兆し
「今年前半には米国経済は失速する可能性が高い」とみるのは伊藤忠総研上席主任研究員の髙橋尚太郎氏だ。
高橋氏はリポート「米国経済:インフレ低下と並行して本格的な景気悪化の兆し」(1月25日付)の中で、米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した昨年12月の製造業・非製造業景況感指数(PMI)のグラフを示した【図表2】。
これを見ると、製造業、非製造業ともに好不況の節目である50を割り込み、経済規模の縮小が始まっていることがわかる。
また、高橋氏はインフレ動向のグラフも示している【図表3】。これを見ると、財(モノ)を中心にインフレ率の低下が進んでいることがわかる。主にこの2つを合わせて高橋氏は今後の見通しをこう指摘する。
(1)インフレピークアウトへの期待が一段と高まる一方、景気は、製造業が減産に転じ、非製造業では急速にマインドが冷え込むなど、本格的な悪化の兆しがある。2023年前半は景気悪化とインフレ率の大幅低下が同時進行して、マイナス成長となることもあるだろう。
(2)これを受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)は「物価抑制のために景気を犠牲にする」という現在の政策スタンスの修正を図り、2023年冬頃には利下げを開始すると見込む。
(3)そして、2024年にかけては、インフレ率の低下によって実質可処分所得も改善し、景気は回復に向かう見通しである。