マツダは、ロータリーエンジンを発電機として使用する、プラグインハイブリッドカー(PHV)「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」を2023年1月13日、ベルギーで開かれたブリュッセルモーターショーで初めて公開した。
MX-30は欧州で今春発売するとみられている。マツダはこれまでの「公約」通り、発電機としてロータリーエンジンを復活させることになる。
軽量コンパクト、振動や騒音が少ないロータリーエンジン
ロータリーエンジンは発電専用で、タイヤの駆動には用いず、走行はモーターのみで行う。電気自動車(EV)として、外部電源からも充電できる。
ブリュッセルモーターショーに先立ち、マツダの丸本明社長は1月4日、広島市内で年頭の記者会見を行い、発電用のロータリーエンジンを搭載した新型車を2023年3月までに投入すると明らかにしている。日本での発売時期はわからないが、マツダが主力市場の欧州で新型車を公開したことから、発売も欧州が先行するとみられる。
マツダは2020年11月9日に発表した中期経営計画の修正版で「ロータリーエンジン技術を使ったマルチ電動化技術」を「この先2年」で実現するとしていた。
当時、丸本社長は「(MX-30以外の)他の商品への展開も含め、2022年前半から順次、市場に導入していく」と述べていた。
当初の公約より発売時期は遅れるものの、ロータリーエンジンの復活は間違いないようだ。関係者によると、「当初はマツダの創立100周年となる2020年に発売する予定だったが、ロータリーエンジンのアップデートに時間がかかった」ということらしい。
マツダが1967年発売の「コスモスポーツ」で、世界初の本格量産に成功したロータリーエンジンは、軽量コンパクトで振動や騒音が少ないのが大きなメリットだ。
ピストンを用いる通常のレシプロエンジンに比べ、燃費が悪いのがデメリットだが、発電用に用いるのであれば、メリットの方が大きいと判断したのだろう。
ピストンの往復運動ではなく、おにぎり型のローターを回転させて動力を得るロータリーエンジンは、高回転になるほどレシプロエンジンより静かでスムーズだ。
このため、トヨタ、日産など世界のライバルも1970年代に市販を目指したが、73年の石油危機で燃費の悪さが問題となって実現しなかった。結果的に、マツダが世界で唯一、ロータリーエンジンを量産するメーカーになった。
満充電で85キロ走行、「さらなる長距離ドライブに対応」 待たれる詳しいスペック発表
当初、マツダは軽自動車、ファミリーカーから高級車まで、生産するすべてのクルマをロータリーエンジンにする計画だった。しかし、燃費の悪さから断念し、「RX-7」のようなスポーツカーに限り、ロータリーを搭載してきた。
そのマツダ孤高のロータリーエンジンも2012年の「RX-8」の生産終了で姿を消していた。今回は発電専用ながら、11年ぶりの復活となる。
新たに搭載する発電用のロータリーエンジンは型式が「8C」と発表されただけで、排気量や出力などは明らかになっていない。従来のマツダのロータリーエンジンは名機「12A」や「13B」が主力で、今回は新開発であることがわかる。
新たなMX-30 e-SKYACTIV R-EVは、17.8kWhのリチウムイオン電池と、50リットルの燃料タンクを組み合わせたシリーズ(直列)式プラグインハイブリッドカーだ。満充電で85キロ走行でき、ロータリーエンジンの発電で「さらなる長距離ドライブに対応する」という。
マツダファンならずとも、詳しいスペックの発表が楽しみだ。(ジャーナリスト 岩城諒)