【DX先進企業】「丸亀製麺」トリドールHDのDXはなぜ大規模なのに、こんなに短期間で成功したか?/特別対談:磯村康典さん×入山章栄さん

提供:株式会社トリドールホールディングス

需要予測×設備によるエネルギーマネジメント...持続可能社会の実現&コスト削減へ

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入山 さらにこの先、店舗のDXが進めば、現場はもっとラクになっていきそうですね。今後の展望として、取り組みたいことはありますか?

磯村 いくつかありますが、関心が高いのは、エネルギーマネジメントです。トリドールHDが展開する業態の性質上、水光熱などのエネルギー消費、食品の廃棄ロスには、きちんと向き合い、削減していかなければならないと考えています。地球環境課題にも積極的に取り組み、持続可能な社会をつくっていくために、やらなくてはならないことですから。実は、さきほどの需要予測システムを用いると、食品ロスはもちろん、エネルギーに関しても最適化できると思います。

入山 詳しく教えてください。

磯村 たとえば、うどんの調理では、水はずっと出しっぱなし、お湯も沸かし続けています。ですので、コストの面でも、かなりのガスや電気代を使っているので、ここもきちんとマネジメントしようと動き出していて、厨房機器メーカーや空調メーカーとの話も進んでいます。
 というのも、「丸亀製麺」では、お客様が多くて忙しい時間帯はたくさんのうどんを茹でられるように、火力を強めています。これまでは人手でコントロールしていましたが、厨房機器と需要予測システムとを連動させ、火力を自動で変えられる仕組みを取り入れようとしています。空調も同じ考え方ですね。お客様が多いときは冷房を強めにして、逆なら弱めてエネルギー使用量を削減する。いま、これをなんとか実現させようと取り組んでいます。

入山 需要予測と設備を掛け合わせたエネルギーコントロールの仕方は、考えたこともありませんでした。でも、トリドールHDが変えていったら、相当のインパクトがありますね。

磯村 サステナビリティとDXをどうやって両立させるか考えたとき、私たちにとって身近だった問題がこの2つ――エネルギー消費と食品ロスの課題でした。これらをマネジメントしていくことが、次のステップだと考えています。
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入山 ありがとうございます。最後に、トリドールHDのDX推進をけん引された磯村さんが、DXに悩む日本企業にアドバイスをするとしたら、どんなことでしょうか。

磯村 DXという言葉の持つ印象からか、なにがなんでもデジタルを使わないといけない、というような話になりがちだと思います。そういう考えにとらわれているようであれば、いったんデジタルを置いといて考えましょう。どうしたら、会社の業務が最適な状態になるのか――そこをよく考えて、そのために必要なデジタル化、システム活用を当てはめていくと、理想形が描けると思います。

入山 まさにおっしゃるとおりですね。DXは、目的を実現するための、ただの手段ですから。最も大事なのは、「DXで何を実現させたいか」という目的にあります。

磯村 DXは手段である――これは、とても大事だと思います。DX推進にあたって、私が社長の粟田貴也と最初によく話していたのが、ミッションである「食の感動体験」の提供や、ビジョンである「グローバルフードカンパニー」を目指していくという内容でした。結局、ミッション、ビジョンを実現するためのDXでなければ、取り組む意味がないと思います。また、そうした思いが明確であれば、社内でみんなが一丸となって、力強く取り組みを推進していけるのではないかと思います。

――磯村さん、入山さん、ありがとうございました。

   トリドールHDのコーポレートサイト内では2022年11月11日、同社の「デジタルトランスフォーメーション戦略」ページをリニューアルした。

   トリドールHDのDXをわかりやすく表現した「グラフィックレコーディング風アニメーション」、「粟田社長が語る『トリドールホールディングスの未来とDX』」をはじめ、8本の柱から構成する「DXビジョン2028」、社員・店舗、パートナー企業へのインタビューなどを公開している。

   今回、J-CASTニュース 会社ウォッチで掲載した対談のフルバージョン(テキスト・動画)もお見逃しなく。会社ウォッチでは「現場の変革」に焦点を当てたが、フルバージョンでは、DX推進にあたっての費用面の話題や、具体的にどのようなシステムや仕組みを導入したか、詳細に語られている。DX関係者必見の内容だ。

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【プロフィール】
磯村 康典(いそむら・やすのり)

株式会社トリドールホールディングス 執行役員
CIO(最高情報責任者) 兼 CTO(最高技術責任者)
https://www.toridoll.com/

大学卒業後、富士通へ入社しシステムエンジニアに。ネット黎明期にソフトバンク社に入社し、その後、小売業等の数社でECシステム開発・運用責任者を務める。2008年にガルフネット社 執行役員に就任し、飲食業向けITシステム・アウトソーシングサービスの開発・営業責任者を担い、12年Oakキャピタル 執行役員に就任し、事業投資先であるベーカリーやFMラジオ放送局等の代表取締役を務めながらハンズオンによる経営再建に従事。19年から現職。

入山 章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール教授
https://www.waseda.jp/fcom/wbs/faculty-jp/6072

慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院より博士号(Ph.D.)を取得。同年、米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授に就任。13年に早稲田大学ビジネススクール准教授、19年から現職。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』、『世界標準の経営理論』はベストセラーとなっている。

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