2021年(2021年11月1日調査)の母子家庭数は前回調査(2016年)に比べ、3.7万世帯(3.0%)減少、父子家庭は同3.8万世帯(20.3%)減少した。だが、母子家庭の約1割が生活保護を受けており、経済的に厳しい状況が続いている。
平均年間収入...母子家庭の母親272万円、父子家庭の父親518万円
厚生労働省が2022年12月26日に公表した「令和3年(2021年)度全国ひとり親世帯等調査」によると、母子家庭は119.5万世帯、父子家庭は14.9万世帯だった。同調査は基本的に5年毎に行われている。
母子家庭数は2011年度調査で123.8万世帯のピークを付けた後、2016年度、2021年度調査と2調査連続で減少している。一方、父子家庭数は2006年度調査で24.1万世帯のピークを付けた後、3調査連続で減少している。(表1)
ひとり親家庭、特に母子家庭では、経済的に厳しい状況が続いている。
母子家庭の母親の平均年間収入は272万円、同居親族を含む世帯全員を合わせた年間平均収入は373万円。それに対して、父子家庭の父親の平均年間収入は518万円、同居親族を含む世帯全員を合わせた年間平均収入は606万円と、大きな開きがある。
子どものいる世帯の同居親族を含む世帯全員を合わせた年間平均収入813万円と比較すると、母子家庭は約60%、父子家庭でも約75%の収入にとどまっている。
その背景にはひとり親の就業状況がある。母子家庭の母親の就業率は86.3%なのに対して、父子家庭の父親の就業率は88.1%となっている。
母子家庭の母親の場合には、就業率が2011年には80.6%まで低下したが、その後、女性活用の機運が高まったこともあり、2016年度調査では81.6%に上昇し、2調査連続で上昇した。
半面、父子家庭の父親の就業率は2006年度調査では97.5%だったが、2016年度調査では85.4%にまで低下した。(表2)
しかしながら、母子家庭の母親と父子家庭の父親の正規雇用率を見ると、母子家庭の母親は48.8%にとどまっているのに対して、父子家庭の父親は69.9%となっている。
それでも、母子家庭の母親の場合、2003年度には正規雇用率は39.2%にまで減少したが、徐々に上昇してきている。
一方で父子家庭の父親は2003年に75.9%だった正規雇用率が、2011年には67.2%にまで低下し、その後も小幅な上昇にとどまっている。(表3)
一人親家庭の生活保護受給率...母子家庭9.3%、父子家庭5.1%
この就業率、特に正規雇用率の差が、母子家庭と父子家庭の所得格差のひとつの原因となっている。
それは、一人親家庭の生活保護受給率にもあらわれている。母子家庭の生活保護受給率は9.3%と約1割であるのに対して、父子家庭では5.1%にとどまっている。
母子家庭の生活保護受給率は2011年には14.4%だったが低下が続いている。これは、女性の就業率の上昇が背景となっている。
半面、父子家庭の生活保護受給率は2006年(これ以前の統計はない)にはわずか0.5%だったのが、2016年には9.3%にまで上昇した。この背景には、非正規雇用率の上昇があると見られる。(表4)
生活保護受給者の統計では、母子家庭と父子家庭の区別はなく、一人親家庭と母子世帯として集計しているが、母子世帯の生活保護受給数は2012年度の11万4122世帯をピークとして8年連続で減少し、2020年度には7万5646世帯にまで減少している。特に、2016年度からは毎年5000世帯を超える減少が続いている。(表5)
最新の統計では22年10月の生活保護受給している母子家庭数は6万7521世帯まで減少している。この母子家庭の生活保護受給数の減少要因は、前述したように、母子家庭の母親の就業率が上昇したことにある。
しかし、たとえば全世帯平均の高校卒業後の進学率が83.8%なのに対して、母子家庭の進学率は66.5%、父子家庭の進学率は57.9%にとどまっており、ひとり親家庭の進学率は低くなっている。
くしくも、岸田文雄首相は2023年1月4日の年頭記者会見で「異次元の少子化対策」を打ち出した。ぜひ、ひとり親家庭の子どもたちも支援の対象に含めて欲しいものだ。