NHKの新会長に就任した稲葉延雄氏(72)は2023年1月25日、会見を開き、注目される受信料不払い者に対する「割増金」制度について、「該当するからと一律に請求するわけではない」と発言した。
懸念されていた強権的な請求に慎重な考えを示したわけだが、ネット上では逆に反発の意見が強まっている。会見で丁寧に説明しようとした稲葉会長の数々の「発言」が、図らずも火に油を注ぐ結果になったようだ。
いったい何が問題だったのか。ネットの声を拾うと――。
稲葉新会長「受信料制度の意義を納得していただいたうえで...」
受信料の割増金制度は、テレビを設置した月の翌々月の末日まで受信契約の申し込みを行なわなかったり、「不正な手段」で受信料を逃れたりした場合に、支払うべき受信料の2倍の割増金を上乗せして請求できる。つまり、計3倍の受信料を支払うことになるわけで、今年4月1日から制度が始まる。
NHKの「割増金」導入問題については、J‐CASTニュース会社ウォッチでは「NHK、4月から受信料不払い者『割増金』...ネットでは罰金以前に『改革』求める声『大河リサイクル活用』『主婦も働く時代に朝ドラどうなの?』『紅白とチコちゃんは...』」(1月20日付)などの記事で報じてきた。
1月25日、NHK新会長に就任した稲葉延雄氏(72)の会見があった。同氏は1974年、日本銀行に入行。考査局長や理事を歴任した。2008年にリコー特別顧問。リコー経済社会研究所所長、参与などを務めた。
NHK公式サイト「会長会見:経営に関する情報」や報道をまとめると、稲葉新会長は1月25日の就任会見の中で割増金制度について、「適用条件に該当するから一律に請求するということではない」と説明。「お客様の個別の事情を勘案しながら運用していく」と述べ、即時実施には慎重な姿勢を見せた。
そして、「(割増金制度は)受信料の公平性確保の見地から導入されたと思っている。ただ、導入されても、受信料制度の意義を納得していただいたうえで、受信料をお支払いいただくという方針に変わりはない」と付け加えた。
また、今年10月に約1割の受信料値下げを控え、制作コストの削減を余儀なくされているが、「コンテンツの質や量が落ち込むことがあっては本末転倒」と強調し、「たとえばメタバースでの新しい表現を探究したりするなど、技術のデジタル化によって番組の質を確保していきたい」と述べた。
現在は放送の「補完業務」と位置づけられているインターネット配信などについては、「民業圧迫とならないように留意する」とする一方、「世の中はどんどん変わっている。放送法の規定が現状と合わなくなってきている面もあるのかもしれないと思う」とも語り、「そうした点を踏まえて総務省の部会などでも今後の議論を進めていただきたい」と続けた。
さらに、政治との距離に対する認識を問われると、「報道機関として自主的な編集判断に基づき、不偏不党の立場から行動していく。自主・自律、公平・公正な立場を堅持し、何人からも干渉されない対応をしていくべき」と述べた。
「放送法が現状と合わなくなっている」のならスクランブル化を、という意見
今回の稲葉延雄NHK会長の記者会見について、ヤフーニュースコメント欄にはさまざまな意見が寄せられた。圧倒的に多かったのは、「NHKのスクランブル放送化を求める」という意見だった。
特に、稲葉会長が「インターネット配信」に関連する文脈の中での発言だが、「放送法の規定が現状と合わなくなってきている」と述べたこともあって、こんな意見が集中した。
「『放送法の規定が現状と合わなくなってきている面もあるのかもしれないとも思う』。その通りですね。今は放送法ができた頃と違って、放送電波はデジタルとなり、各家庭のTVには標準で限定受信(スクランブル)の機能が備わっています。
時代に合わせてスクランブル化するのが筋じゃないですかね。少なくとも公共放送は地上波だけに絞るべきで、それ以上の利益(娯楽など)はBSやネットを活用して自由契約で出すべきです」
「稲葉さんのお子さんやお孫さんは、どんな年を越していますか? 自宅ではどんな娯楽を楽しんでいますか? 今はゲーム(花札ではありませんよ。奥が深い。私などはついていけません)あり、YouTubeあり、SNSあり。国民はそうした自分の好きなネットなどにお金をかけたいのです。ですから、公平・公正に昔と今の違いで判断してください」
「我が家は5人家族。子どもはみな成人している。子どもは家にいてもほぼTVを見ないでスマホばかりいじくっている。もう数十年すればTV放送を見ない者が爆発的に増えると思われる。チューナーレスのネットTVばかり売れる。その大きな要因がNHKの強制的な受信料徴収だ。放送業界はもっと声をあげるべきでしょう」
「個別の事情を勘案しながら運用する」のはむしろ不公平
稲葉会長の別の「発言」も、受信料制度や割増金の問題に火に油を注ぐ形となった。
「『受信料制度の意義を納得していただいたうえで、受信料をお支払いいただく』。ほとんどNHKを見ていなくて、納得していないのに払い続けているのだけど、だったら払わなくていいんですか?」
「『受信料制度の意義を納得していただいたうえで......』。納得いかないから支払わない人がいるのでしょ? 納得していないのに半ば無理矢理とってきたじゃん」
割増金についてもこんな発言が、反発と疑問をもたれるもととなった。
「稲葉新会長は『適用条件に該当するから一律に請求するということではない』と説明。『お客様の個別の事情を勘案しながら運用していく』という。こういうところが一番『不公平』なところなのだがね。長年不払いを続けていることが分かっているのに裁判されない人もいれば、ちょっと滞っただけで裁判起こされる人もいる。
弱そうな人には裁判したり割増金を適用したりして,強そうな人には戸別訪問もしないし裁判もしない。『公平性』をうたうなら、ルールは一律の条件で適用すべき」
「『適用条件に該当するから一律に請求するということではない』。こんなことを言っているが、NHKのさじ加減でそれができてしまうことに反発しているのがわからないですかね?」
NHKにメタバース、期待していない?
とはいえ、割増金は「個別の事情の勘案」などせずに、しっかりとるべきだという意見もあった。
「私は変なバラエティー番組を見るより、NHKの番組をよく見ています。なので、しっかり受信料を払っています。でもそこは個人の自由では?見たい人は払って、見たくない人は払わない。NetflixやAmazonプライムもそうしているじゃないか。一律で払わせるなら、税金みたいに強制的に徴収しないと不公平だと思う。逃げ得はダメ!絶対!」
ほかにも、稲葉新会長に対する「NHK改革」の期待と注文の意見が相次いだ。
「新聞のテレビ番組表でNHK欄(BS放送を含む)を見ると、多数の番組に再放送の『再』が載っています。受信料を徴収してまで再放送をする意味はなんでしょう。そんなに放送するものがなければ、放送休止にして電気の無駄使いを止めたらどうでしょうか」
「『記録的寒波』と騒いでいるのに、画面外側にホンのちょこっとテロップつけているだけで、流している放送は民放と同レベルの情報ワイドショー」
「新しい技術云々というが、低所得者の受信料で行うべき事業かどうかをよく考えて。4Kや8Kなどは低所得者が享受できるはずがない。放送技術研究所は誰のために研究しているのか」
「メタバース、NHKはタダで導入できるのか? 余計な費用を費やしてコンテンツ新規導入するなら、それこそ無駄。メタバース(を必要とする)人口が国民全体のどのくらいいると思っているのか」
NHK応援団「批判する人、けっこうNHK見てるじゃん」
ヤフーニュースコメント欄ではNHK批判が殺到する一方で、「NHK応援団」も声をあげている。
「NHK受信料を払っている者から見ると、どうでもよいことだ。NHKを見る必要のない方はチューナーレステレビを買えばよいと思う」
「ヤフコメでは『見ないから払わない』『スクランブル放送にしろ』とかコメントする人がいるが、そんな人たちも大河や朝ドラなんかのニュースにコメントしている。見てるやん! まあ、病院の待合室や大衆食堂なんかで見ているのかもしれないけどね」
(福田和郎)