太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマス...。環境負荷の少ない再生可能エネルギー(再エネ)の活用・導入がいま、企業や自治体でどんどん広がっていることをご存じですか? 「再エネ活用、はじめませんか?」では、最先端の再エネ事情、取り組みを紹介しています。
今回は、食品廃棄物から再生可能エネルギーを創出している、東北バイオフードリサイクルの取り組みを紹介します。
微生物の働きから生成したバイオガスを燃料として、再エネを発電
近年、フードロスを始めとする食品廃棄物の発生量が問題となっており、農林水産省の統計によると、食品産業全体での食品廃棄物等の年間発生量は、1600万トン超となっています。
こうした食品廃棄物を有効活用できないか――。
東北バイオフードリサイクル(宮城県仙台市)は、仙台市を中心とする宮城県および、近県の事業者が排出する食品廃棄物を受け入れ、微生物の働きによって生成したバイオガスを燃料として再生可能エネルギーを発電し、固定価格買い取り制度(FIT)を活用して売電しています。
年間の発電量は約6500MWh(メガワット時)。これは、一般家庭の約1500世帯が1年間で使用する電力量に匹敵します。そして、この発電によって年間約3000トンのCO2が削減されることになります。
食品廃棄物から再生可能エネルギーを創出するまでのフロー
プラスチックが混入した食品廃棄物を受け入れ、リサイクル率も向上
東北バイオフードリサイクルによる食品リサイクル・バイオガス発電の特徴は、弁当がら等のプラスチック容器や割りばし、爪楊枝等が混入している食品廃棄物も受け入れが可能なことです。
従来は、プラスチック容器等の異物が混入した食品廃棄物は肥料や飼料としての利用が難しいため、焼却処分をされていました。
しかし、同社の食品リサイクル・バイオガス発電プラントでは、受け入れた食品廃棄物等は粉砕して、有機物と、それ以外の容器や包装紙等に分別。その有機物は、メタン発酵することによってバイオガスを発生させ、ガスエンジンで発電しています。
このように、再生可能エネルギーの発電に加えて、これまでは焼却処分されていた異物が混入した食品廃棄物をメタン発酵処理することで、リサイクル率の向上にも寄与しています。
東北バイオフードリサイクルの食品リサイクル・バイオガス発電プラントは、2022年2月より段階的に稼働し、5月からは本格的な稼働を開始しています。また、9月には発酵残渣の肥料登録を行い、肥料としての有効活用への取り組みも始めました。
なお、この取り組みは、(1)食品リサイクルをはじめ廃棄物処理のノウハウを持ち、これまでも仙台市内でプラスチックリサイクル事業等を行ってきたJFEグループのJ&T環境。(2)鉄道事業のほか、駅ビル・エキナカ・ホテル等を、幅広く事業を展開するJR東日本グループ。(3)バイオマス発電に関する知見を有し、ガス・電気の安定供給とエネルギーサービス事業を展開する東京ガス。これら3社による専門領域のノウハウを結集した共同事業になります。
東北バイオフードリサイクルの事業内容
食品リサイクル&再エネ創電の取り組み、首都圏でも進む
一方、首都圏でも、食品リサイクルによるバイオガス発電事業の取り組みは始まっています。
JFEグループとJR東日本グループにより、2016年に設立された株式会社Jバイオフードリサイクル(神奈川県横浜市)では、2018年8月に食品リサイクル・バイオガス発電プラントが完成しました。
Jバイオフードリサイクル横浜工場の年間発電量は約1100万kWh(キロワット時)。これは、一般家庭の約3000世帯が1年間で使用する電力量に匹敵します。そして、この発電によって年間約5500トンのCO2が削減されることになります。
また、Jバイオフードリサイクルでも弁当がら等のプラスチック容器や割りばし、爪楊枝等が混入している食品廃棄物の受け入れを実施。メタン発酵によりバイオガスを発生させ、ガスエンジンで発電することで、リサイクル率を向上させる取り組みを推進しています。
Jバイオフードリサイクルのリサイクル発電施設
食品廃棄物の有効活用による再生可能エネルギーの創出。これからの資源循環型社会の実現に向けた取り組みが始まっています。
なお、環境省の再生可能エネルギー情報のポータルサイト「再エネ スタート」では、「2050年カーボンニュートラルの実現」を目指して、さまざまな企業、自治体が取り組む最先端の事例を紹介しています。今回取り上げた企業以外の事例を知りたい人は、こちらをご覧ください。