大企業の賃上げの流れ、中小企業に波及するのは難しい
明治安田総合研究所の経済調査部エコノミスト前田和孝氏も、「賃金と物価の好循環は起こらない」といったトーンで指摘する。
前田氏は、リポート「【日本消費者物価指数(22年12月)】コアCPIは4%に到達~中長期的なインフレ期待の定着は難しい」(1月20日付)のなかで、中小企業の賃上げの動きに注目して、こう指摘した。
「今年の春闘では、経団連が賃上げを前向きに検討するよう呼びかけるなど、円安で企業業績が堅調なグローバル企業を中心に、高水準の賃上げに向けた機運が高まっている。もっとも、こうした賃上げの流れが中小企業を含めた幅広い層の労働者に波及する展開は期待しづらい。
エネルギー価格上昇の主因である原油価格はすでに落ち着いた推移に転じている。円安も一巡し、円/米ドル相場はピーク時から1ドル=20円/ドル前後円高方向に戻っている。再び急速な円安や原油高が進むことがなければ、年後半には物価上昇率は鈍化に向かう可能性が高い。
これは家計にとっては朗報だが、中長期的なインフレ期待の定着は結局実現しないとみる。日銀が目指す、経済の好循環を生み出す『前向きな物価上昇』を伴う物価目標の達成は容易ではない」
中小企業の賃上げが厳しい情勢のうえ、日本銀行が期待する「安定的な物価上昇」が収まってしまうというわけだ。(福田和郎)