孫への生前贈与、1500万円まで非課税扱い 適用期間2025年3月に延長で「教育資金贈与信託」の利用はまだまだ増える!?

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   幼稚園の入園から大学を卒業するまでにかかる教育費は、すべて国公立に通ったとしても、子ども一人当たり1000万円強。私立大学で一人暮らしをするとなると、3000万円を超える(日本政策金融公庫、文部科学省調べ)とされる。

   高い教育費が少子化の原因の一つとされるなか、祖父母などから孫への教育資金が贈与税の課税対象からはずれる「教育資金贈与」の特例措置の適用期間が2023年1月23日からの通常国会を経て、25年3月まで延長される見通しとなった。

   教育資金贈与の特例措置は、親や祖父母から30歳未満の子や孫への教育資金を非課税で贈与できる制度。最高1500万円までが非課税となる。21年の税制改正で、特例の適用期間が今年3月31日までとなっていた。

「教育資金贈与信託」さらなる利用増に期待

   教育資金贈与は、2022年の税制改正要望で、適用期間が2025年3月31日までに延長される方向が示された。創設以来、これまで何度か改正されているが、適用期間の延長も、今回の税制改正で再々延長となりそうだ。

   そもそも、教育資金贈与を利用するには祖父母と孫が贈与契約を交わし、銀行などに孫の名義で「教育資金口座」を開設する必要がある。その代表例が、信託銀行などが取り扱う「教育資金贈与信託」だ。

   教育資金贈与信託は、2014年度の税制改正で導入された「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」に基づき創設された信託商品だ。

   これは、孫など(受益者)の教育資金として、祖父母など(委託者)が信託銀行など(受託者)に金銭を信託した場合に、1500万円(学校以外の教育資金の支払いに充てられる場合には500万円)を限度として、贈与税が非課税になる。

   祖父母の資産を孫などに資産を移転させるとともに、教育・人材育成をサポートすること、また消費の活性化につなげる仕組みだ。

   信託協会によると、そんな教育資金贈与信託の利用は年々増加している。

   2017年3月時点の契約数で18万1786件、信託財産設定額(いずれも累計)で1兆2399億円だった。それが20年には23万11件、1兆6701億円、21年は24万3128件、1兆7983億円と増え、22年9月末現在では25万5450件、1兆9155億円と、2兆円に迫っている(2022年12月22日の発表)。【図1参照】

   J-CAST会社ウォッチ編集部の取材に、信託協会は「利用者の拠出額の設定をみると、500万円程度が6割弱を占めています」と話す。

   そして、「税の優遇制度を使った、高齢者から孫世代への資産の移転ニーズの強まりがあり、受益者(孫)の親が教育資金の心配をすることなく、お金を安心して消費に回せるほか、子どもを教育に専念させてあげられることもあります」と、狙いどおりの効果が表れているといえそうだ。

図1 教育資金贈与信託は年々増えている
図1 教育資金贈与信託は年々増えている

「消費の活性化」と「教育機会の充実」に寄与

   信託協会が教育資金贈与信託について、受益者(孫)の親(1万6469人)を対象に調査したところ、その79.2%が「教育資金に係る家計の負担が軽くなった(なる)」と回答したことがわかった。また、56.0%が「選択肢の広がりなどにより、学びの支援が充実する」、50.5%が「将来の生計の見通しが立てやすくなった(なる)」と答えた。【図2参照】

   教育資金贈与信託の利用者の多くが「教育資金に係る生計の負担が軽くなった」「将来の選択肢を広げることができる」と答えるなど、非課税の効果が、消費の活性化と教育機会の充実に現れているといえそうだ。

図2 「消費の活性化」と「教育資金の充実」を実現(信託協会調べ)
図2 「消費の活性化」と「教育資金の充実」を実現(信託協会調べ)

   その一方で、申し込みの理由をみると、71.5%が「教育に寄与するから」と答えたほか、4割以上が「煩雑な都度の贈与をせずに一括贈与できるから」、「使途を教育目的に限定し、贈与ができるから」と答えた。【図3参照】

   孫の教育支援に対して、祖父母世代の関心の高さがうかがえる。

図3 約7割が教育への寄与と回答(信託協会調べ)
図3 約7割が教育への寄与と回答(信託協会調べ)

「塾や予備校」「習い事」にも使える

   贈与税の非課税制度を使った教育資金は、入学金や授業料といった学費以外に、塾や予備校、習い事、海外留学などの費用としても使えることがメリットの一つだ。

   実際に、「一括贈与を受けた資金の使途(予定を含む)」(複数回答)を聞くと、「塾・予備校の費用」(61.3%)、「大学・短期大学の学費」(59.0%)、「高等学校の学費」(55.5%)、「習い事の費用」(53.8%)などの回答が、いずれも5割を超えた。義務教育を含む「中学校の学費」が46.5%、「小学校の学費」が34.5%と続いた。【図4参照】

   高等教育を中心に、小学校から大学までの学費に幅広く利用されており、さらには学校外の費用にも使われており、教育機会の充実や人材育成に寄与していることがわかる。

図4 小学校から大学までの学費に幅広く利用されている(信託協会調べ)
図4 小学校から大学までの学費に幅広く利用されている(信託協会調べ)

   また、調査では「この(教育資金贈与信託)制度がなかった場合、教育にどのような影響があったと思うか」との問いに、67.3%が「他の支出を減らした」と回答。46.6%が「教育に要する費用を節約した」と答えた。「進学や学びなおし、習い事を諦めた」との回答も27.1%あった。【図5参照】

   教育資金贈与信託があることで、他の消費支出を減らしたり、教育にかかる費用を節約したりする必要がなくなっていることがわかる。

図5 教育資金贈与信託がなかったら...(信託協会調べ)
図5 教育資金贈与信託がなかったら...(信託協会調べ)

コロナ禍で学費の負担感は増えた?

   さらに、「新型コロナウイルス感染症の影響による家計における学費の負担感に変化があったか」聞いたところ、孫の親たちの44.3%が、「学費の負担感が大きくなった」あるいは「これから学費の負担感が大きくなる恐れがある」と答えた。

   部活動や課外学習の機会が減り、リモート学習が増えるなど、コロナ禍で学校生活も一変した。その一方で、企業の業績悪化で親の収入が減るなど、学費への負担感が大きくなるなか、教育費の負担軽減につながる制度として有用であることがうかがえる。

   ただ、「収入に変化はなく、学費の負担感も変わらない」と答えた親も46.4%。7.9%と少ないが、「収入は減少したが、学費の負担感は変わっていない」と答えた親もいた。【図6参照】

図6 「学費の負担感が大きくなった」44.3%が回答(信託協会調べ)
図6 「学費の負担感が大きくなった」44.3%が回答(信託協会調べ)

   なお調査は、教育資金贈与信託の受益者(孫)の親権者(親)を対象に実施。回答者数は、1万6496人。教育資金贈与信託の利用実態について、三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、りそな銀行の利用者に聞いた。信託協会が2022年10月に発表した。

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