コロナ禍の企業の資金繰りを支援して、大きな効果をみせた実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」。ところが、ゼロゼロ融資を利用したにもかかわらず、その後に倒産した企業は、2022年12月末までに累計584件に達したことが東京商工リサーチの調べでわかった。2023年1月13日の発表。
産業別でみると、最多は飲食業や宿泊業を含む「サービス業他」の184件で、対人接触型のサービス業への影響の大きさを裏付けた。また、建設業103件や製造業97件も目立った。
負債1億円以上が過半数
ゼロゼロ融資は、2020年3月の政府系金融機関に続き、初の緊急事態宣言が発令された同年5月から民間金融機関でも受け付けていた。
ゼロゼロ融資は、コロナ禍での外出制限などで立ち行かなくなった飲食店をはじめ、企業の倒産を制える効果が一定程度認められたが、その副作用で「過剰債務」が懸念材料に浮上している。
2020年7月にゼロゼロ融資を受けた後の倒産が、初めて発生(2件)。その後も毎月発生している状況だ。具体的には、20年に19件、2021年には113件(前年比494.7%増)と増加をたどり、22年には前年比4倍増の452件と急増した。
詳しくみると、負債1億円以上が316件と全体の54.1%を占める一方、同じ期間(2020年7月~22年12月)の全国倒産(1万6230件)では、負債1億円以上の構成比が25.4%(4102件)で、ゼロゼロ融資後の倒産の半分以下にとどまることがわかる。【図1参照】
一方、負債総額は20年が40億400万円で、21年が517億5700万円(前年比1192.6%増)、22年は1178億700万円(同127.6%増)で推移している。負債額の平均は、21年が4億5800万円で最も高く、22年は2億6000万円と前年より43.2%減少した。
負債額別にみると、最多が「1億円以上5億円未満」の234件で、全体の40.0%を占めた。次いで、「1000万円以上5000万円未満」の152件(構成比26.0%)、「5000万円以上1億円未満」の116件(同19.8%)が続く。
「10億円以上」が35件(同5.9%)、「5億円以上10億円未満」が47件(同8.0%)で、負債1億円以上が過半数の316件で、全体の54.1%を占めた。
ゼロゼロ融資の据置期間は最長5年だが、実質1~2年が多いとされる。時間の経過とともに右肩上がりで倒産は増勢を強めている。そうしたなか、今年7月から、ゼロゼロ融資の返済開始のピークが見込まれており、「過剰債務」への対応が急がれる。
同社が昨年12月に実施した企業アンケート調査によると、ゼロゼロ融資の利用を約半数の47.8%が回答。このうち、28.2%の企業が据置期間終了後に再び「返済猶予を受けている」または「返済に懸念がある」と答えていることもわかった。
飲食店、コロナ禍乗り切れず 従業員数「10人未満」の企業も...
また、ゼロゼロ融資後に倒産した企業を従業員数別にみると、「5人未満」が256件で全体の43.8%で最も多かった。次いで、「5人以上10人未満」が130件(構成比22.2%)で続き、「10人未満」は386件と、全体の6割超(同66.0%)にも達している。
東京商工リサーチは、「このことから小・零細規模の企業が通常の借り入れに加えて、緊急避難的なゼロゼロ融資で負債が膨らんだことがうかがえる」とみている。
「10人以上20人未満」が115件(同19.6%)、「20人以上50人未満」が62件(同10.6%)で続く。中堅以上の規模となる「50人以上300人未満」も21件発生した。
産業別では、最多が飲食業や宿泊業を含む「サービス業他」の184件で、全体の31.5%を占めた。次いで、「建設業」が103件(構成比17.6%)、「製造業」が97件(同16.6%)、「卸売業」が88件(同15.0%)、「小売業」が56件(同9.5%)で続く。上位5つの産業だけで528件と、全体の90.4%を占めた。
さらに、業種別でみると、最多は「飲食店」の64件。このうち、居酒屋などの酒場・ビヤホールが最も多く12件、次いで、食堂・レストランが10件、日本料理店が6件と続く。
飲食業界は、コロナ禍の行動制限や外食スタイルの変化にさらされ、さまざまな支援策を受けながらも業績回復まで持ちこたえられなかった。
また、外食需要低迷の煽りを受けた食料品製造業が30件、飲食料品の卸売業が24件で上位に並んだ。このほか、資材調達の遅れや工事延期・見直しの影響を受けた建設関連、燃料価格の上昇が追い打ちをかけた道路貨物運送業が上位に入った。
倒産形態は、消滅型の「破産」が9割超の535件
ゼロゼロ融資を受けた後の企業倒産を、その形態別にみると、最も多かったのは「破産」の535件で全体の91.6%と、9割を超えた。次いで、「取引停止処分」の28件、「民事再生法」が12件、「特別清算」が6件と続いた。
消滅型の法的倒産が541件で全体の92.6%を占めて圧倒的。事業転換を含めた再建の見通しが立たず、事業継続を断念して「破産」を選択するケースが大半となった。
また、倒産した企業を地区別・都道府県別でみると、地区別では「関東」の177件が全体の30.3%を占めて、最多だった。次いで、「九州」が147件、「東北」の86件、「近畿」52件、「中部」45件、「北海道」32件、「中国」21件、「北陸」と「四国」がそれぞれ12件。
都道府県別では、最多は「東京都」の89件。「福岡県」の53件、「埼玉県」が44件、「大分県」33件、「北海道」32件、「宮城県」の30件と続いた。
なお、調査は負債1000万円以上の企業倒産のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。