メンタルが不調な時、すべてのタスクに100%フルパワー込めるのやめよう【尾藤克之のオススメ】

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うつ病と向き合うには?

   いまでこそ、うつ病は多くの人に知られるようになりました。ところで、私はかつての職場で、こんな出来事に遭遇しました。もちろん、昔の話です。「2年以内に組織を組成して会社を設立する」という目標を掲げて、事業に邁進した時期がありました。会社から与えられた期間は2年です。2年で会社が納得する成果を上げられなければ、ジエンドです。経験豊富な5名がアサインされました。

   1年目決算は最終利益ゼロのトントンの成果を上げることができました。単体では十分な経常利益を上げていました。会社内の按分負担で、法外なコーポレート費や管理費を負担しての最終利益ゼロですから、この調子でいけば、勝算はあると考えていました。しかし、活動はハードで、夜23時ころからミーティング、睡眠時間2時間など当たり前でした。

   勝負の2年目、すぐに1人がうつ病で脱落、春過ぎにも1名がうつ病で脱落しました。朝方がつらいようで、出社ができませんから、毎日「直行」扱いしました。会社の上層部にバレたらプロジェクトがつぶされると思いましたし、メンバーのこれまでの取り組みを思って、かん口令をひきましたが(もちろん今ならこの対応も変わりますが、繰り返しますが昔の話です)、秋頃には隠すことができなくなりました。メンバー全員でプロジェクト管掌の上長に説明しました。すると...。

「うつ病? いま流行りのヤツか。でもさ、明日会社来なかったら、死ぬってことだったら来るだろう?」「じゃーそれって、クセみたいなものだよなぁー」

   このように、まったく理解は得られませんでした。プロジェクトは2年を待たずに解散となりました。今の時代、社内からのリークがあったら、ニュースになると思います。

   時代は変わり、当時から比べれば、こころの病に対する理解度も高まりました。それでも、うつ病に苦しむ人は減りません。本書が興味深いのは、著者が、うつの「底」から抜けるためにやったすべてのことを紹介している点です。うつ病は難しい病気ですが、自分を受け入れ、それでもうまいことやるにはどうすべきか。

   また、社会復帰するのはとても険しい道のりになります。その最大の要因は「回復が追い付かないこと」だと思います。本書は、うつに悩む人のほか、予備軍の人、周りの人にも役立つ内容です。(尾藤克之)

尾藤 克之(びとう・かつゆき)
尾藤 克之(びとう・かつゆき)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。著書は『最後まで読みたくなる最強の文章術』(ソシム)など19冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も連載中。
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