NHKは今年(2023年)4月1日から受信料を不正に支払わない人に対して、受信料の2倍に当たる「割増金」を通常の受信料に上乗せして請求できる制度を導入することになった。
NHKは昨年(2022年12月)に割増金制度導入を定めた放送受信規約の変更案を総務大臣に認可申請したが、総務省が1月18日、認可を発表したからだ。
「悪質」と判断された受信料未払い者に対するNHKの「罰金」制度ともいえるが、ネット上では批判の声とともに「NHK改革」を求める声が上がっている。
松野官房長官、NHK強権発動に「待った」
NHKの「割増金」導入問題については、J‐CASTニュース会社ウォッチでも「NHK、『悪質』な受信料不払い者に『2倍割増金』導入へ...ネット騒然『強権的な脅し』『スクランブル化は?』『いい番組多いのに...惜しい』」(2022年12月8日付)などの記事で報じてきた。
総務省の公式サイト「報道資料:日本放送協会放送受信規約の変更の認可」(1月18日)によると、これまで受信契約の申し込みは「遅滞なく」としていたが、申し込み期限を、テレビを設置した月の翌々月の末日までとする。
割増金はこの期限を過ぎた場合に請求できる。また、「不正な手段」で受信料の支払いを免れたケースも対象となる。
報道によれば、今回の割増金制度導入について、松野博一官房長官は1月19日の記者会見で、「(受信料)負担の公平性を是正するためのもの」であり、「NHKが視聴者の理解のもとで、自発的な受信料支払いを促す取り組みを進めることは重要。受信料制度の意義を丁寧に説明し、支払いをお願いする努力を重ねていくことが期待される」などと述べた。
暗に、何が何でも未払い者すべてに割増金を請求していく、という強権的手法に「待った」をかけたと受け取れる。
今回の割増金導入問題、ヤフーニュースコメント欄ではさまざまな意見が寄せられた。
たとえば、社会学者の西田亮介・東京工業大学准教授(情報、メディア研究専攻)は、
「NHKの受信料は、公共放送維持のための他に類例の乏しい特殊な負担金と考えられている。ざっくりいえば税金『ではない』。税金であれば滞納すると、督促、追徴課税、差し押さえ等多様なレベルで納付を促すインセンティブが用意されているが、受信料は税金ではないこともあってNHKにはそうしたツールがなかった」
と説明。そのうえで、
「一般的なビジネスにおける事業者であれば、少数のフリーライダー(集団の利益にタダ乗りする人)の存在は、サンクコスト(埋没費用)として無視するという選択がありえるが、NHKの場合は、視聴者が受信料を公平に負担しなければならないという原則が定められているため、契約率を高めなければならず、それがかつての悪名高い激しい訪問営業等の潜在的な要因にもなっていたと考えられている。
いま、訪問による受信料徴収は廃止方向に向かっていて、それもあって受信料の納付が低調になっているので割増金は納付促進の仕組みといえる。通常の契約世帯における不利益変更は特にないはず」
という見方を示した。