サイゼリヤの株価が2023年1月12日の東京株式市場で一時、前日終値比336円(11.5%)高の3260円まで上昇し、2018年2月以来、約5年ぶりの高値をつけた。
前日取引終了後に発表した2022年9~11月期(第1四半期)連結決算は、営業損益が前年同期から黒字転換。同時に発表した自社株買いも買いを集める材料となった。
40万株の自社株買い、自己株式を除く発行済み株式の0.8%相当
サイゼリヤの第1四半期決算の内容を確認しておこう。売上高は前年同期比27.0%増の431億円、営業損益は16億円の黒字(前年同期は2億円の赤字)、経常利益は51.8%減の17億円、最終利益は45.9%減の13億円だった。
国内は全体的に前年同期より「ウィズコロナ感」が高く、人々の出足は回復したが、サイゼリヤの場合、飲食チェーン各社が値上げに踏み切るなか、低価格を維持したことで回復に勢いがついた。ただ、日本事業は資材やエネルギーの価格高騰を円安が増幅する逆風も強い。
他方、中国を中心とするアジア事業は、営業利益が前年同期比31.1%増の20億円と好調で、日本事業の営業赤字4億円(前年同期は19億円の赤字)を補った。最終利益が減っているのは、コロナ関連の補助金の減少によるものだ。
サイゼリヤが2023年1月5日に発表した22年12月の月次報告(日本事業)では、既存店の売上高が前年同月比7.0%増、客数が5.2%増。これは、22年9~11月の既存店の売上高23.9%増、客数17.7%増よりは減速したものの、好調を保っている。
自社株買いについては40万株、10億円を上限に1月12日~2月20日の間に東京株式市場で買い付ける。40万株は自己株式を除く発行済み株式の0.8%に相当する。
証券会社は目標株価引き上げ...GS証券は、引き続き3段階で最上位の「買い」に位置づけ
サイゼリヤの発表内容を受けてゴールドマン・サックス(GS)証券は2900円から3100円に、いちよし証券は3000円から3200円に目標株価を引き上げた。特にGSは投資判断を3段階で最上位の「買い」に位置づけ続けており、もともと高く評価している。こうした証券会社の見方もサイゼリヤ株の上昇に弾みをつけているようだ。
サイゼリヤの2023年8月期通期の連結決算の業績予想は、売上高が前期比17.8%増の1700億円、営業利益は約18倍の75億円を見込んでいる。
市場では23年春に日銀総裁が交代することで円高に向かう見通しも取り沙汰され、国内事業の逆風がやや弱まる可能性もあるが、見込み通りの業績V字回復が十分ありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)