上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、HIKAKINやはじめしゃちょーなど人気YouTuberのマネジメントを中心に展開するUUUM(ウーム)です。
UUUMは2013年6月、YouTuber動画を利用したオンライン販売事業を目的にON SALEとして設立されましたが、同年11月に早くもマネジメント業に転換し社名も変更。2017年8月には東証マザーズ(現グロース)市場に上場を果たしています。
販管費の増加によって営業利益率は漸減傾向に
それではまず、UUUMの近年の業績の推移を見てみましょう。
UUUMの売上高はここ数期で大きく伸びており、2022年5月期には4期前の約2倍となる235億円あまりとなりました。なお、前期比では微減していますが、これは当期に「収益認識に関する会計基準」等を適用した影響によるもので、業績自体は悪化していません。
営業利益率は、2019年5月期の6.3%をピークに下がっています。2020年3月には事業拡大に伴い東京ミッドタウンへ本社を移転し、「従業員の増加に伴って人件費を中心とした販管費が増加」するなどしていました。
これを受けて、2022年5月期はオフィスの一部返却などコスト削減も進めており、過去のイベント等に関わるグッズの在庫評価損を一過性費用として計上したことから販管費全体は増額したものの、粗利益の増加もあって営業利益は期末見込みを上回りました。ただし、社内ソフトウェアの減損損失の計上などもあり、最終利益は前期を下回っています。
2023年5月期の業績予想は、売上高が270~285億円(前期比14.5~20.8%増)のレンジ予想、営業利益が11~13億円(同13.2~33.8%増)、営業利益率は3.9~4.8%、最終利益は6.5~7.8億円(同45.0~74.0%増)と好調の見込みです。
YouTubeからの「アドセンス売上」は全体の半数弱
2022年5月期末で所属するYouTuberチャンネル数は1万3818。代表的なクリエイターは、日本YouTuber界のパイオニア「HIKAKIN」(チャンネル登録者数1100万人)のほか、「はじめしゃちょー」(同1040万人)、「Fischer's(フィッシャーズ)」(同781万人)、「水溜りボンド」(同406万人)などです。
UUUMの報告セグメントは「動画コンテンツ事業」の単一セグメントですが、「クリエイターサポートサービス」と「自社サービス」の2つの事業を展開しています。2022年5月期の売上高は、クリエイターサポートサービスが223億円と全体の94.5%。うち、アドセンス売上が106億円、広告売上が75億円を占めています。
アドセンス売上とは、YouTube上に流れる広告による収益の一部を受領するものです。専属クリエイターがYouTubeに登録した動画の場合、UUUMがアドセンス収益を一括して受け取り、受領額をUUMの自社収益として計上し、その一部をクリエイターに支払っています。一方、ネットワーククリエイターや業務提携締結先の場合は、アドセンス収益を代理受領し、サービス手数料部分を売上として計上しています。
広告収益はタイアップ動画によるもので、こちらも顧客企業より受領したプロモーション料を自社収益として計上し、一部を動画制作費としてクリエイターに支払っています。 このほか、クリエイターサポートサービスには、グッズの販売収益、イベントのチケット販売収益や協賛金売上などを計上しています。
自社サービスは13億円。自社オリジナルのチャンネル運営や実況動画と親和性の高いゲームの開発などを行っています。2022年5月期は、講談社と共同運営する「ボンボンTV」「ポケるんTV」「UUUM GOLF」などの大型番組制作売上を計上しています。
社員の平均年齢31歳、平均年収537万円
UUUMの従業員数は、事業の拡張に伴って増えています。2017年5月期末に144人だった従業員数(連結)は、翌期から234人→382人→471人→546人と増加し、2022年5月期末は578人となっています。なお、単体従業員数も連結とほぼ同じです。
平均年間給与(単体)は、従業員の増加に伴い平均年齢とともに一時減少していますが、2022年5月期は537.2万円とここ数期で最高水準となっています。平均年齢は31.46歳、平均勤続年数は2.46年です。
UUUMの採用サイトを見ると、新卒採用のほか、動画制作、コンテンツプロデューサー、アートディレクター、エンジニア、アカウントエグゼクティブ(国内広告営業)など40件以上の求人募集が行われています。
アカウントエグゼクティブの想定年収は300~840万円(深夜10時間を含む月42時間分の見込み時間外手当込み)。月曜日10:00~14:00のみコアタイムのフレックスタイム制を採用しているそうです。
今後本格化しそうな米GAFAのリストラの影響は?
2017年8月に東証マザーズに上場したUUUMの株価は、同年8月31日に2266円、2019年2月14日には6870円の高値を記録しました。しかし、コロナ禍が始まった2020年1月になると株価は急落し、2022年の1月14日には671円の安値を付けています。
2023年に入ってからは800円台を推移しています。
UUUMの動画コンテンツ事業は、YouTubeを中心とした他社運営の動画配信サービス上で展開しており、YouTubeやGoogleの事業戦略の転換により、UUUMの事業および業績が大きく影響を受けるリスクがあります。
なお、いわゆるGAFAMを中心とする米大手ITプラットフォーマーでは、2022年秋から人員削減やその事前準備を始めていると報じられており、クリエイターサポートサービスの売上高の半分近くを占めるアドセンス売上への悪影響が懸念されています。
また、人気チャンネルのYouTuberの活動が休止、停止したり炎上したりしたときや、特定YouTuberの人気低下やYouTuber全体に対する飽きが生じたときなどにも、業績が急速に悪化するリスクがあるでしょう。
UUUMとしてもアドセンス(YouTubeからの収益)以外の収益獲得に努めており、2022年5月期の第4四半期は、初めてアドセンス以外の売上が全体の半数を超えました。
なお、コロナ禍の影響ですが、2020年5月期の第4四半期には、緊急事態宣言下の「ステイホーム」効果で3ヶ月の合計動画再生回数が144億回を超えましたが、現在はコロナ前の110億回台に戻っています。(こたつ経営研究所)