「宅配」「持ち帰り」飲食業で急増する倒産...競合激化で資金繰り「息切れ」

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   2022年の飲食業の倒産(負債1000万円以上)は、過去20年間で最少の522件だった。前年比19.4%減で、554件だった2004年以来、18年ぶりに500件台にとどまった。東京商工リサーチが2023年1月12日に発表した。

   新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2020年の飲食業の倒産は過去最多の842件を記録したものの、政府や自治体の資金繰り支援策が奏功して、飲食業倒産はこの2年連続して減少をたどった。

   ただ、新型コロナ関連で倒産した飲食店は319件で、前年比6.3%増えた。飲食業の倒産の61.1%(前年は46.2%)を占め、これまで飲食業を支えてきた支援策の息切れが鮮明になった。なかでも、「宅配」や「持ち帰り」の飲食業の倒産が急増している。

  • 飲食業の倒産状況とは(写真はイメージ)
    飲食業の倒産状況とは(写真はイメージ)
  • 飲食業の倒産状況とは(写真はイメージ)

コロナ関連の倒産、2022年は61.1%占める

   2022年は3月21日以降、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は発令されず、年末には3年ぶりに営業制限のない日常が戻り、飲食業は書き入れ時となった。しかし、1年を通して新規感染者数は増減を繰り返し、東京商工リサーチは「感染への警戒からコロナ禍前の水準に売り上げが戻っていない飲食業者は多い」とみている。

   2022年の飲食業の倒産は、2月(前年同月比5.4%増)を除いて前年同月を下回っていたが、11月(同25.6%増)、12月(同15.3%増)と2か月連続で大幅な増加に転じた。

   背景には、売り上げの回復が遅れるなか、光熱費や食材価格、人件費などコスト負担が急激に増すなど、12月にコロナ関連倒産が月間最多となる42件発生した影響もある。

   月次でみても、コロナ関連の倒産率が5割を下回ったのは7月(39.0%)のみで、「コロナ支援策の息切れが倒産に直結しつつある」と、東京商工リサーチは指摘する。

   倒産した飲食業を業種別でみると、最多は「酒場,ビヤホール(居酒屋)」で前年比21.0%減の120件だった。飲み会や接待の減少などコロナ禍の生活様式の変化が定着し、客足の回復が遅れている。

   次いで、日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼肉店を含む「専門料理店」の118件(前年比30.5%減)、「食堂,レストラン」の112件(同5.0%減)と続く。【図1参照】

   ちなみに、前年(2021年)の飲食業の倒産で最も多かった業種も、日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼肉店などの「専門料理店」(170件)だった。次いで「酒場,ビヤホール(居酒屋)」の152件で、これは過去30年で2020年に次ぐ2番目の多さ。「食堂・レストラン」は118件で続いた。

図1:飲食業の倒産「酒場、ビヤホール(居酒屋)」「専門料理店」「食堂、レストラン」が上位
図1:飲食業の倒産「酒場、ビヤホール(居酒屋)」「専門料理店」「食堂、レストラン」が上位

「宅配」や「持ち帰り」倒産原因は「運転資金の欠乏」?

   倒産が増加したのは、コロナ禍で中食需要を取り込んで好調だった「宅配飲食サービス業」と「持ち帰り飲食サービス業」で、前者は前年比47.8%増の34件、後者が25.0%増の20件と大幅に増えた。【図1参照】

   コロナ禍で対面による営業に「制約」を課せられた飲食業にとって、事業の再構築の一環として、新たに宅配や持ち帰りサービスへ参入した飲食業者は少なくない。古くから「出前」や「御用聞き」の風習があったことや、店の営業と併用できることで比較的導入しやすかった事情があった。

   メニューを大きな変更が必要ないので、仕入れコストが急激に上がることがない。また、配達要員のパート・アルバイトが必要になるが、コロナ禍で昼のピークでも店内の客数が減っていることで、その要員を新たに雇うことなく確保できるのもメリット。

   仮に、宅配用のバイクや電動自転車を購入することになったとしても、初期投資のコストは抑えることができるので、いわば「副業的」に事業化できるので参入しやすいことがある。

   こうしたことから競合との競争が激化し、思うように利益を上げることができなかった可能性がある。

   飲食業の倒産の原因別の最多は、「販売不振」の427件(前年比21.7%減)だった。次いで、「既往のシワ寄せ」が30件(同18.9%減)、「他社倒産の余波」19件(同18.7%増)と続いた。

   増加率をみると、「運転資金の欠乏」が前年の4件から8件に倍増して、最大だった。コロナ禍の資金繰り支援策の終了や縮小で、事業を支えきれず倒産する飲食業者は今後ますます増加する可能性がある。

   「不況型」倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は457件(同21.6%減)で、飲食業の倒産に占める構成比は87.5%(前年89.9%)だった。

   倒産を形態別にみると、「再建型」の割合が減少した。最多は消滅型の「破産」の495件(前年比19.3%減、前年614件)で、飲食業の倒産の94.8%を占めた。

   一方、再建型の「民事再生法」は8件(前年比52.9%減)にとどまった。小・零細規模の多い飲食業者は、コロナ禍の長期化で再建のめどが立たず、消滅型の倒産を選ぶ割合が上昇している。

15府県で、倒産増える

図2:15の府県で飲食業の倒産が増えた
図2:15の府県で飲食業の倒産が増えた

   都道府県別では、15の府県で倒産件数が増加した一方、27の府県で減少した。北海道や東京都、青森県などの5都道県で横バイだった。【図2参照】

   倒産件数が前年から大きく増えた府県は、宮城県が3件から14件(366.6%増)に、新潟県が7件から13件(85.7%増)に、京都府が25件から32件(28.0%増)に増えた。

   一方、大きく減った府県は、次の通り。目立ったのは、兵庫県が53件から26件(50.9%減)に、大阪府が105件から61件(41.9%減)だ。

   続いて、茨城県が16件から10件(37.5%減)、広島県が16件から10件(37.5%減)、静岡県17件から11件(35.2%減)、神奈川県26件から18件(30.7%減)に減った。そのほか、福岡県が28件から21件(25.0%減)、埼玉県17件から13件(23.5%減)、愛知県40件から31件(22.5%減)、栃木県14件から11件(21.4%減)となった。

   なお調査は、飲食業を「食堂・レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場・ビヤホール」「バー、キャバレー、ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2022年(暦年)の倒産を集計、分析した。

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