「宅配」や「持ち帰り」倒産原因は「運転資金の欠乏」?
倒産が増加したのは、コロナ禍で中食需要を取り込んで好調だった「宅配飲食サービス業」と「持ち帰り飲食サービス業」で、前者は前年比47.8%増の34件、後者が25.0%増の20件と大幅に増えた。【図1参照】
コロナ禍で対面による営業に「制約」を課せられた飲食業にとって、事業の再構築の一環として、新たに宅配や持ち帰りサービスへ参入した飲食業者は少なくない。古くから「出前」や「御用聞き」の風習があったことや、店の営業と併用できることで比較的導入しやすかった事情があった。
メニューを大きな変更が必要ないので、仕入れコストが急激に上がることがない。また、配達要員のパート・アルバイトが必要になるが、コロナ禍で昼のピークでも店内の客数が減っていることで、その要員を新たに雇うことなく確保できるのもメリット。
仮に、宅配用のバイクや電動自転車を購入することになったとしても、初期投資のコストは抑えることができるので、いわば「副業的」に事業化できるので参入しやすいことがある。
こうしたことから競合との競争が激化し、思うように利益を上げることができなかった可能性がある。
飲食業の倒産の原因別の最多は、「販売不振」の427件(前年比21.7%減)だった。次いで、「既往のシワ寄せ」が30件(同18.9%減)、「他社倒産の余波」19件(同18.7%増)と続いた。
増加率をみると、「運転資金の欠乏」が前年の4件から8件に倍増して、最大だった。コロナ禍の資金繰り支援策の終了や縮小で、事業を支えきれず倒産する飲食業者は今後ますます増加する可能性がある。
「不況型」倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は457件(同21.6%減)で、飲食業の倒産に占める構成比は87.5%(前年89.9%)だった。
倒産を形態別にみると、「再建型」の割合が減少した。最多は消滅型の「破産」の495件(前年比19.3%減、前年614件)で、飲食業の倒産の94.8%を占めた。
一方、再建型の「民事再生法」は8件(前年比52.9%減)にとどまった。小・零細規模の多い飲食業者は、コロナ禍の長期化で再建のめどが立たず、消滅型の倒産を選ぶ割合が上昇している。