50代以上で、10年以上経営者を務めている全国のベテラン中小企業経営者1236人のうち、自身の引退後の会社について、約4割が「廃業」を考えていることが、中小企業向け事業保険のエヌエヌ生命保険(東京都渋谷区)の調べでわかった。
2023年も、中小企業の後継者不足は深刻な経営課題として横たわっているようだ。
「90歳以上、生涯現役」でいたい経営者、なんと8.8%も!
調査は、経験豊富な中小企業のベテラン経営者が考える、引退や事業承継に対する意識について把握するために実施した。
まず、1236人のベテラン経営者に、「いつまで経営者でいたいか」を聞いたところ、25.7%の経営者が「70~74歳」と回答。20.4%が「75~79歳」と答え、46.1%が70代に集中した。【図1参照】
10.7%(「80~84歳まで」の9.3%と「85~89歳まで」の1.4%の合算)が80代だが、「90歳以上、生涯現役」でいたいと考えている経営者も、8.8%を占めていた。これらは安心して事業を継承したい、継承できる人材が「不在」であることの表れかもしれない。
これを年代別で比べると、50代、60代のベテラン経営者は「74歳まで」という回答が多いのに対して、70代のベテラン経営者は「75~84歳まで」という回答が多かった。また、「90歳以上、生涯現役」との答えが最も多かったのは50代のベテラン経営者(11.2%)だった。
こうした1236人のベテラン経営者に、「引退後、経営する会社をどうするか決めているか」と聞いたところ、最も多かったのは「廃業」の37.8%。次いで、「親族への事業承継」の21.4%、「会社関係者への事業承継」の11.0%と続いた。
ここ数年、中小企業でもM&A(企業の合併・買収)が活発になっているものの、「M&A」を考えているベテラン経営者は、わずか3.4%だった。「未定」は26.1%。【図2参照】
引退後の事業承継は考えたが、具体的な行動は?
さらに引退後の方向性について、親族や会社関係者への事業承継と答えた400人(構成比32.4%)のベテラン経営者に、「引退後の会社の方向性を決めた理由」について聞いたところ、最も多かったのは「事業が続いて欲しいから」で65.8%。次いで「家族・親族に資産を残したいから」(29.8%)、「経営意欲がある人に任せたいから」(25.8%)が続いた。【図3参照】
また、同じ400人に対して、「引退後を考えてなにか実行したことはあるか」と聞いたところ、42.3%が「事業承継候補者との協議」と答えた。その一方で、43.8%が「特にない」と答えた。事業承継を想定しながらも、4割以上が引退後に向けて具体的な行動を起こしていないということがわかった。【図4参照】
経営者に期待する能力は「事業への専門知識」と「実行力」
次に、ベテラン経営者に、「経営する会社を『継ぎたい』『買収したい』という申し出があった場合、どう思うか」を聞いたところ、「継ぎたい」との申し出には、「前向きに検討したい」と「どちらかというと前向きに検討したい」を合わせた「前向きに検討したい」と答えた人が62.3%を占めた。
また、「買収したい」との申し出には、45.3%(「前向きに検討したい」20%と「どちらかというと前向きに検討したい」が25.3%の合算)だった。【図5参照】
また、「これまでの経験から、経営者の能⼒として期待すること」(複数回答)を聞いたところ、「事業についての専門知識」が50.2%と最も多く、次いで「実⾏⼒」の49.1%、「コミュニケーション能⼒」の39.9%が続いた。
「営業力」が38.2%、「リーダーシップ」(36.0%)や「財務・経理の知識」(34.1%)、「需要分析・判断の的確さ」(32.7%)も3割を超えていた。【図6参照】
なお、調査は、50代以上で、10年以上の従業員300人未満の規模の会社経営者(社⻑、会⻑、取締役)または従業員のいる自営業者を対象に、2022年11月18日~20日に実施。12月14日の発表。サンプル数は1236人。