日銀は切り札の「政策変更」...金融正常化のヤマ場まで温存?
一方、今回は政策の修正は見送り、「YCCの利回り幅再拡大などの措置は、将来の金融正常化のヤマ場まで温存するのではないか」とみるのは野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「日本銀行のYCC撤廃観測は行き過ぎか」(1月16日付)のなかで、一部の報道をきっかけに、市場には日本銀行が18日に一気にYCCを撤廃するのではとの観測まで出ているが、「行き過ぎだ」と一蹴する。
その理由としてこう指摘する。
「日本銀行が一気にYCCの撤廃を決める可能性は、4月の新体制の下でさえも年内は高くないのではないか。
YCCは、日本銀行としては、新体制下で進めていく正常化策の最大の山場であるゼロ金利解除を混乱なく実行していくために必要な枠組み、と位置付けているのではないか。
長期国債の利回りの安定を確保するには、政策金利の先行きの方針を示して金融市場の期待をコントロールするフォワードガイダンス(中央銀行の金融政策の指針)と国債買い入れの増減の2つの手段を組み合わせることが必要となる」
こう説明する。そのうえで、
「ただし、マイナス金利解除の際に、金融市場が先行き大幅な政策金利の引き上げを予想すれば、長期国債利回りが大きく跳ね上がってしまうリスクがある。フォワードガイダンスだけで、長期国債利回りの安定を維持できるかどうかは不確実だろう。
そこで日本銀行は、マイナス金利解除を円滑に実行するためには、YCCの下での国債買い入れという枠組みを残しておき、必要に応じて『指値オペ』などを通じて機動的に国債を買い入れて長期国債利回りの上昇を抑えることが必要、と考えているのではないか」
というのだ。つまり、いきなりYCCの変動幅撤廃、あるいはYCCそのもの撤廃に踏み込んでは、市場の大混乱を招き、マイナス金利解除に進めないという。
だから、日本銀行としては将来の正常化の際の「切り札」に温存したいはずだ、と木内氏は読むのだった。