世論の関心が他に集まり、懸案の政策課題が一気に進むも...地元理解などハードルは高く
国論を二分する原発の是非、効果が定かでない排出量取引や炭素賦課金、巨大な金額ばかりが目立つGX投資......大きな政策転換が、多くの論点をほとんど素通りする形で決着した。
ロシアのウクライナ侵攻に端を発するエネルギー価格高騰や電力不足などが「追い風」になった。
安倍晋三元首相の国葬の是非、自民党と旧統一教会との癒着に世論の関心が集中し、秋の臨時国会の論戦もそうしたテーマが中心になった結果、原発・エネルギー政策の大転換は、安全保障政策の転換とともに、「思った以上にすんなり通った」(経産省関係者)。岸田政権の支持率は落ちたが、懸案の政策課題は一気に進んだのだから、皮肉な状況だ。
ただ、原発は、停止中の再稼働一つとっても、地元理解を得るのは簡単でなく、ましてリプレースなど「仮に受け入れる地域があったとしても僅かな数と思われ、それでも新型炉開発などに巨費をつぎ込むのか」(反原発団体関係者)など、ハードルの高さばかりが目立つ。CPについても、脱炭素への実効性は未知数だ。
経産省として積年の課題を大きく前進させたのは間違いないが、実行の道筋は容易に見通せないままだ。(ジャーナリスト 岸井雄作)