岸田文雄政権が2050年の脱炭素社会の実現に向けた総合的な政策パッケージを22年末にまとめた。
原発の運転期間延長とリプレース(建て替え)など、原発の積極活用を前面に打ち出すとともに、脱炭素の取り組みを促すために、二酸化炭素(CO2)排出に応じて企業にコスト負担を求める「カーボンプライシング(CP)」を23年度から段階的に導入することも盛り込んだ。
政策としてはきれいにまとまったが、果たして実効性はどうなのか。
原発の政策転換、2つの柱...運転期間の延長、新増設・リプレース
新政策は、脱炭素社会への政府の司令塔である「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」(議長=岸田首相)が2022年12月22日に「GX実現に向けた基本方針案」としてまとめた。意見公募(パブリックコメント)を経て、23年2月に閣議決定し、関連法案を通常国会に提出する段取りだ。
基本方針案の大きな柱は、原発活用とカーボンプライシング(CP)だ。
原発については、J-CASTニュース 会社ウォッチでは、これまでの記事で、政策の転換に向けて議論を急いでいることを詳報してきた。
◆参考
・岸田政権が着々と進める『原発回帰』...半年も満たずに、原子力政策大転換 新増設・建て替えまで踏み込んだ『新政府方針』の是非(2022年12月10日付)
・岸田政権の原子力政策、原発推進へ『政策転換』...再稼働、新増設、そして運転期間の延長着々(2022年10月14日付)
・政府期待の『革新軽水炉』...経産省、2030年代運転への『工程表』示す だが、『新増設せず』の従来方針と矛盾...原子力政策の見直し進むか?(22年8月19日付)
原発政策については、22年7月の参院選後の8月、岸田首相がGX実行会議で検討を指示してから4か月の短時間で、経済産業省の審議会などの議論なども一応経て、一気に年末に決着させた。
原発の政策転換の柱は2つ。第1に、原発の運転期間の延長で、東京電力福島第1原発事故を教訓に、原則40年、20年延長できると定めたルールを変える。
60年という基本は維持しつつ、再稼働に必要な審査などで、長期停止した期間を運転期間から除外できるようにした。仮に5年間停止した場合は、運転開始から65年まで運転できるようになる。
第2に、原発の新増設・リプレースだ。
政府はこれまで「想定していない」としてきたが、「将来にわたって原子力を活用するため、建設に取り組む」と明記。まったくの新規立地は現実的には想定しにくく、廃炉になる原発の建て替えを想定し、「次世代革新炉」と呼ばれる、現行の原発の改良型を開発する方針だ。