サッカーW杯の最中、ドイツで飛び出た日本人への差別的発言...アジア系住民への偏見や差別に、今こそ「ノー」を【海外通信@ドイツのいま】(高橋萌)

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昔ながらの童謡も、人種差別的...企業が使用中止へ

   希望はあります。

   ドイツで、これまで見逃されてきた人種差別的な作品にもメスが入りました。

   ドイツの童謡に「Drei Chinesen mit dem Kontrabass(コントラバスを持った3人の中国人)」があります。これは、何十年も幼稚園や小学校で歌われてきた歌です。

   歌詞の内容は、3人の中国人が道端でコントラバスを持って何か話していると、警察がやってきて、事情を聞くというものです。そして、その歌詞が中国人の発音を揶揄するように、さまざまなバリエーションで訛っていく...。ドイツ語の発音の練習に持ってこい、と語学学校で歌うケースもあるようです。

   ドイツの大手おもちゃメーカーであるラベンスバーガー社(Ravensburger Verlag)は、この歌を今後発売する商品には収録しないことを決定しました。

   また、2021年9月にはフォルクスワーゲン財団が「童謡における人種差別」をテーマにイベントを開催。文化とも密接に関係する分野であるため賛否があるのは当然ですが、差別的なイメージが子どもに与える影響は甚大です。

   たとえば私には、こんな経験があります。ある昼下がりのこと。子連れで入ったカフェで、お向かいの席にも小さな子連れの家族がいました。年齢の近い子どもがいることで、言葉を交わしていると、4歳くらいの男の子がもじもじ恥ずかしそうに、でも微笑みながら、人差し指で目を横にひっぱったのです。

   その瞬間、私も、男の子の親も凍り付きました。すぐに、「やめなさい!」と言ったお母さんに、「なぜ?」という顔の男の子。

   「自分たちとは違う顔の人」という表現は、挨拶がわりに使って良いジェスチャーではありません。でも、この男の子は、よく知らないままに、友好的なポーズとして使ったようなのです。そういうことは、大人の世界でもまだ横行しています。

   人種差別と聞くと、ドイツではナチス・ドイツ時代のユダヤ人差別やトルコ系、アフリカ系への差別を思い浮かべることになりますが、歴史的な悲劇も始まりは日常的な差別や偏見でした。

   今はもう我慢の時ではなく、声をあげることで、「怒らせると面倒な人種」の仲間入りをするべき時なのかもしれません。

   先のW杯では、アフリカ勢初のベスト4入りしたモロッコの快進撃にも注目が集まりました。私たちが暮らす街にも、こんなにモロッコ人の隣人がいたのかと驚くほど、勝ち進むたびに勝利を祝う車のクラクションが響き渡りました。

   それは、「私たちはここにいる!」「私たちは弱者じゃない!!」という叫びにも聞こえました。(高橋萌)



【プロフィール】
高橋 萌(たかはし・めぐみ)

ドイツ在住ライター

2007年ドイツへ渡り、ドイツ国際平和村で1年間の住み込みボランティア。その後、現地発行の日本語フリーペーパー「ドイツニュースダイジェスト」に勤めた。元編集長。ドイツ大使館ブログでは「ドイツ・ワークスタイル研究室」を担当。サッカー・ブンデスリーガ大好き。日本人夫とバイリンガル育児に奮闘中。
Twitter: @imim5636

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