テレビ番組作りの真実...制作会社で働く人たちの実態とは?

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エンドロールに名前がたくさん並ぶワケ

   さらに、制作会社のプロデューサーの仕事について、ある女性プロデューサーは「多忙な営業兼マネージャー」だと表現している。制作会社のプロデューサーは責任者ではあるが、あくまで下請けでしかなく、最終的な決定権は放送局の側にあるため、「調整役」だと語る。

   予算管理、スケジュール管理、スタッフ管理とあらゆる管理業務を一手に引き受けているのが制作会社のプロデューサーだという。番組のエンドロールには複数のプロデューサーの名前が表示されるが、所属はテレビ局、制作会社と異なることが多いそうだ。

   入社11年目で、一番エンドロール数が多いという女性プロデューサーは、「業務委託という名の体のいい派遣なんです」と話している。厳しい制作予算削減・合理化の最前線で、放送局とスタッフの狭間に立つ制作会社のプロデューサーには強いストレスがのしかかっているとも。

   第3章「番組制作者たちの軌跡と仕事への意識」では、一直線ではないキャリアパスを浮き彫りにしている。学歴は4年制大学卒業に限らず、専門学校卒業や短大卒の人も少なくない。学生時代のアルバイトがきっかけで、そのまま制作会社に入った人もいる。

   同じ会社に所属し続ける人は稀だという。また、所属会社をかわるだけでなく、担当する番組をかえて、新たな職場を獲得していくようだ。まさに「十人十色」のキャリアパスだ。低賃金と格差への不満がある一方、達成感と臨場感が報酬になっている。

   さて、ジェンダーの観点ではどうか。制作会社の正社員の女性比率が29.7%であるのに対し、契約社員は37.7%と8ポイントも高く、非正規やフリーランスの契約スタッフとなると44.9%とさらに比率が増している(「放送で働く男女に関する実態調査」四方ほか、2016年)。

   このことから、「雇用の調整弁に使われがちな雇用形態に女性が多いことがわかってきた」と書かれている。また、アシスタント・ディレクター職は女性化している。その中から、ディレクター、プロデューサーになった女性の例を複数取り上げ、「業界がジェンダーに関する不公平の解消を目指し、積極的な改善策をとること」を求めている。

   デジタル技術革新が進み、番組が「コンテンツ」として配信される時代になった。制作現場にはより高度な制作技術や高い倫理観が求められるが、果たしてその期待に応えられるのか。

   「テレビがなくなっても制作の仕事はなくならない」という若手アシスタント・ディレクターの発言を紹介し、「番組制作がテレビを離れたコンテンツ制作として展開していく可能性は大いに考えられる」と結んでいる。

   評者も駅伝中継など、いくつかの定番番組のほかは、ネット配信の視聴に明け暮れた年末年始だった。テレビをめぐる大きな変化は、もうそこまで近づいている。(渡辺淳悦)

「テレビ番組制作会社のリアリティ」
林香里・四方由美・北出真紀恵 編
大月書店
2860円(税込)

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