「部下がなかなか成長しない」「最近の部下は何を考えているのか分からない」...そんな悩みをもつ人に勧めたいのが、本書「イマドキ部下を伸ばす7つの技術」(あさ出版)である。上司が部下に合わせて変化することで、部下も変わり、組織全体も変わる、と説いている。
「イマドキ部下を伸ばす7つの技術」(福山敦士著)あさ出版
著者の福山敦士さんは1989年生まれ。キャリア教育研究家。ギグセールス代表取締役。慶応義塾高校、代々木ゼミナール教育総合研究所などで学生にビジネスを教える講師を務めている。
「会社が人を選ぶ」時代から、「人が会社を選ぶ」時代に
最初に、イマドキ部下の特徴を挙げている。
・独立志向でプライベートを重視する傾向にある
・転職や副業は当たり前
・責任が増えることを嫌う
・出世には興味が薄いけど、スキルアップには関心がある
ベテラン社員は頭を抱えたくなる(?)かもしれないが、福山さんは「大切なのは違いを認めることであり、その点を認識した上で指導をすること。部下が変わるのを待つのではなく、上司側が理解して積極的に変化し、部下に働きかけることです」と、上司が変わることを求めている。
なぜなのか?
労働市場が変化し、いまや転職が珍しくない時代だ。かつての「会社が人を選ぶ」時代から、「人が会社を選ぶ」時代になった。
また、若者の認識・特性も「仕事をすぐ辞める」「仕事を離れたコミュニケーションを避ける」など変化した。さらに、「他人の評価が気になる」「早期に結果を求める」「指示以上には動かない」など、働き方のあり方も変化した。
これらの変化があるからこそ、上司は自らの振る舞いを変え、この時代に適した部下とのコミュニケーションを設計する必要があるという。
部下から「この仕事をやる意味はありますか?」と聞かれたら?
そして、イマドキ部下を導く「イマドキ上司」になるための7つの技術を解説する。
1「伝える」。部下から「この仕事をやる意味はありますか?」と聞かれたことはないだろうか? そのようなときには、仕事の意味を適切に伝えることが大切だ。「なぜ、この業務をするのか」目的と意図を先に伝えておく。その際、シンプルにメリットを提示すると効果があるという。
何をしたらいいのか分からない部下には、「ステップ1、2、3」という手順で示すことが重要だ。たとえば、営業の場合、ステップ1:見込み客の連絡先をリストアップする、ステップ2:アプローチ用のスクリプトを用意する、ステップ3:目標を決めてアプローチし、行動と成果を集計して改善していく。
ここまで落とし込めば、営業をしたことがない人でも行動できるという。もっと言えば、新人でも自ら実践できるような手順書やマニュアルを準備できるかが、上司としての力量を表すことにもなるのだ。
このほか、ネガティブなことは率直に言う。要求はできるだけシンプルなこと1つに絞り込む。褒めるときは顔を見て伝える。注意は後回しにせずその場で行う...などを挙げている。
このような調子で、具体的に説明するので、分かりやすい。他の項目についてポイントを絞ると以下のようになる。
2「聞く」。「聞く」ことの目的は、部下の考えや行動を把握することだ。部下は一人ひとり、考え方や受け止め方は異なる。
上司が部下を正しく理解しないと、最適な打ち手は打てない。そのためには、「本当はどう思っている?」と聞いたり、定期的に部下の話を聞く時間を設けたりすることが大切だ。また、席にいる時間を設けて部下の話を聞けるようにする。
3「待つ」。上司は、部下の成長を「待つ」必要があるという。成長には一定の時間がかかる。部下の成長を待つことで、部下は思い切り仕事をすることができ、着実に力をつけていけるようになる。実践に近い仕事から任せる。期限を決めて仕事を任せる。ベターな成果をどんどん探す...などが肝要だ。
部下と戦略的に信頼関係を築くには?
続いて、4つ目以降のポイントを見ていこう。
4「信頼される」。今の時代は、部下と戦略的に信頼関係を構築する必要があるという。部下に信頼されることで、社内全体が力を合わせて成果を上げることができるようになる。そのためには、実績ではなく人格でマネジメントする。自分から挨拶する。決めたことはひっくり返さない。一定の基準を定めて褒める。自分自身に自信を持つ...などを挙げている。
5「人間力を磨く」。ピンチのときにこそ、上司の人間力が問われる。大切なのは、動じずに淡々と対応することだ。
部下がミスしたときこそ、信頼獲得のチャンス。原因を特定し、再発防止策を検討することで、組織力も向上する。上司を演じる上で感情のコントロールは必須なので、自分の心をリセットできる方法を2つ以上持っておくことを勧めている。
6「人間関係を構築する」。よい上司は、社内での調整力や人間関係を円滑にする「社内政治」に精通している。そのため上司は、上役との距離を縮め、関係性を築いておくことが必要だ。
また、社外に人脈をつくるなど、一次情報を得られるルートを持つこと、SNSを活用して部下に話しのきっかけを提供することを勧めている。
7「情報を収集する」。アウトプットの習慣が、インプットを最大化する。また、上司は社長や経営陣と視座を合わせ、常に会社の情報をインストールしておかなければならない。映画やドラマなど、他分野から学ぶことも大切だという。
福山さんはサイバーエージェントにいた頃、年下の上司の元で働く経験があったそうだ。その上司がサポートしてくれたおかげで、月100件アポ、受注記録更新、グループ会社の取締役就任など、福山さんの才能は開花したと振り返る。
「部下を出世させることは、上司の仕事」だとも。従来のような「立場」で部下を指導するのではなく、上司としての役割を「演じる」ことで部下を伸ばすことが、「イマドキ上司」の基本だ、と力説している。「イマドキの上司は大変だ」と思う。(渡辺淳悦)
「イマドキ部下を伸ばす7つの技術」
福山敦士著
あさ出版
1595円(税込)