実質賃金をプラスにするには、賃上げ率3%台後半以上の高いハードル
こうした事態をエコノミストはどう見ているのか。
ヤフーニュースコメント欄では、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が、春闘の賃上げについて、
「岸田(文雄)首相は経済3団体が5日に開いた新年祝賀会のあいさつで、『インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい』と要請しましたが、2023年度のインフレ率の政府見通しはプラス1.7%となっております。
このため、これを春闘賃上げ率に換算すれば、ベースアップがプラス1.7%以上必要で、そこに定期昇給分が1.8%程度上乗せされますから、トータルで3%台後半以上の賃上げ率が求められることになるでしょう。アベノミクス下でのピーク時ですら2.3%台でしたから、かなり高いハードルと言えるでしょう」
と厳しい見通しを示した。
同欄では、三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員の小林真一郎氏が、
「雇用者の賃金は前年比0.5%増と11か月連続でプラスを維持しましたが、9月の同2.2%増や10月の同1.4%増と比べると低い伸びとなりました。ただし、特別給与の落ち込みによるもので、所定内給与は同1.5%増と底堅い伸びを続けており、今回の弱めの数字は一時的なものと考えられます。12月分は特別給与に冬のボーナスが含まれるため大きく持ち直すと期待され、賃金全体の伸び率は再び高まると予想されます」
と説明。しかし、今後については、
「名目賃金は増加しているものの、物価高によって家計の購買力減少が目減りする状態から抜け出せていません。2023年は、春闘での賃上げ率の拡大によって名目賃金の増加基調は維持されそうですが、実際には物価上昇率を超える賃上げは難しく、いずれ消費が低迷することになりかねません」
と、危機感を示した。