働き続ける理由「老後資金の充足だけではない」
次に、定年後も働き続ける理由を聞いた。
それによると、会社員でも公務員でも、61歳の人では、その他の年齢の人に比べて、老後資金と働くことへのやりがいなどの老後資金以外の目的の両方を、定年後も働き続ける理由としている人が多い。【図2「定年後働き続ける理由」参照】
ただ、「老後資金の充足のみ」を目的とした人との合算では、その他の年齢の人と大きく異ならない。
定年後の回答者が、現在の定年前の回答者と同じような定年後の予定であったと仮定した場合、定年後の回答者のほうが定年前の回答者が予定するよりも、「再雇用で同じ企業や団体で、フルタイムで働く」人が少なくない。
このことから、定年後には老後資金の目的を持つ人と、働くことのやりがいなどの老後資金以外の目的を持つ人が増えること(特に、その両方をもつ人が増えること)が、「再雇用で同じ企業や団体で、フルタイムで働く」人の増加につながっている可能性を示唆したかっこうだ。
レポートによると、現在、定年直後の人が数年前に考えていた定年後の働き方の予定は、定年直前の人と同じだったとは限らない。さらに、コロナ禍が働き方に影響を与えた可能性も考えられることから、日本全体の分布とは異なる可能性があると前置きしながら、
「老後資金を充実させる目的の強まりと、働くことへのやりがいなどの老後資金以外の理由の強まりの両方によって、定年前の予定よりも多くの人がフルタイムで勤務を継続している可能性が示唆される」
としている。
老後に働き続ける理由について、岩﨑氏は
「多くの人が老後資金の理由とその他のやりがいなどの理由の両方を挙げているということからは、フルタイムに限らず、やはり老後資金のためというのは重要な理由なのかもしれません。そこに、実際に定年を迎えると、働くことへのやりがいなどの理由が加わる人も多いというイメージでしょうか」
と話す。
ただ、その半面、「働き続けることで幸せになっているのかというと、別レポートで示した結果からは、定年後も働き続けることによって幸福度が高まるという示唆は得られませんでした」と言う。
給料カットや、必ずしも仕事の内容が満足感につながらない現実から、誰もが進んで定年後に働いているわけではないのかもしれない。