女子の人間関係を脳科学で解明! 「脳科学」×「女子の人間関係」をテーマに、「トリセツ」シリーズでおなじみの著者・黒川伊保子さんから、実践的アドバイスが語られているのが本書「女女問題のトリセツ」です。
本書によると、女性たちには互いを守り合おうとする本能があるようです。しかし、価値観の違う相手や出来事に遭遇すると、脳にアラートが灯ります。それが、「イラつく」の正体なのです。
「女女問題のトリセツ」(黒川伊保子著)SBクリエイティブ
女性の自己肯定感は低い?
「料理が得意」「片付け物が得意」「足が綺麗」「バストが豊か」「英語がうまい」「歌が上手」「経理が得意」「接客が得意」「専門分野のスペシャリスト」などの価値観は、上手く賞賛する(女性同士で共感する)ことができます。だから、お互いに盛大に褒め合うことができます。これは席を譲り合うことにも似ています。
「逆に、相手に譲るために、自分の弱点をプレゼントすることもある。『いいわねぇ、あなたは○○ができて。私なんて、ぜんぜんダメ』というふうに。この方法がうまくいくコツは、グループの女子全員に、ある程度の自己肯定感があること。自分の強みを絶対だと思っているから、他の『席』を気持ちよく他人に譲れるのです」(黒川さん)
「ところが、50代半ばまでの女性たちには、この『自己肯定感』さえも難しい。女性はなぜ、自己肯定感が低いのか。最近、自己肯定感の低さに悩む女性は意外なほどに多い。もともと、人類の女性脳の生殖可能期間中の自己肯定感はかなり低い設定である」(同)
女性が他者の評価を非常に気にするのは、「群れて、守ってもらう」という本能があるからだと黒川さんは指摘します。「他人の評価に命がけ」とも。
「命がけは、比喩表現じゃない。脳にしてみれば、まさに、命がかかっているのである。ほんの100年ほど前まで、人類は、生殖期間を終えたらほどなく人生を終えた。なので、女性の自己肯定感が低いことなんて、誰も気にしなかったのである。ところが、21世紀の私たちは、閉経してからまだ50年も生きる」(黒川さん)
「生殖本能だけでは、最後まで幸せに生きていくことができないのである。生殖可能期間中は、女性たち本人も自己肯定感の低さに気づきもしない。愛されたい一心なだけ。いい子と言われたくて、周囲の期待通りに振る舞う。いい人と言われたくて、周囲に尽くす。いい妻であり、いい母であり、いい社会人でありたいと願うように思う」(同)
ところが、更年期を迎えるころになって、女性はふと気づくのです。「私って便利な人になってはいないか?」。こうなると、ポジティブなマインドセットが難しくなります。
「女女問題」を軽妙な語り口で解説
オンナがオンナにイラつく、という場面も存在します。こうした「女女問題」を軽妙な語り口で、心理学をベースにわかりやすく解説するのが本書の特徴です。
もっとも、イラついてしまうのは、なにも「女女」だけでなく、「男男」もそうですし、異性間でも起こります。家庭に限らず、職場でもこのような問題は日々発生しがちではないでしょうか。
また、イラついたり、逆にイラつかれたりする際に、自己嫌悪に陥ることもあります。なぜ、このような感情は発生するのでしょうか。また、若年層、中高年、高齢者などの年齢層に応じた特有の悩みも存在します。広い世代を網羅して悩みを把握することは、世代間の理解にもつながるでしょう。
著者の黒川さんは、極めて冷静に女性を観察しています。厳しい論調ではなく、優しく諭すようなトーンが展開されていますので、受け止めやすいと思います。女性脳とは何か。女性の友情とは何か。その本質を知ることで、イライラの根源を理解することができます。このあたりのことがわかると、家庭や職場での評価もかなり変わってくるかもしれません。(尾藤克之)