代表は「上場するなら市場環境が悪いときに」
2022年8月5日に東証グロース市場に上場したクラシコムの公開価格は1420円、初値は1520円で、上場直後に1962円の高値を付けたこともありました。しかし、その後は1000円を切って、9月28日に977円となるなど落ち込みました。現在は1300円台後半を付けています。
創業者で現代表取締役の青木耕平氏はウェブ上に公開した社史で「上場するなら市場環境が悪いときのほうが合うのではないか」と明かしています。その方が「現在の企業価値だけにフォーカスが当たりやすくなる」という理由です。
あらためて2022年7月期の有価証券報告書を見ると、アプリダウンロードの訴求等のための広告費が3億9182万円となったことが記載されています。これは売上高の7.6%に過ぎません。このあたりも、高い利益率の理由のひとつとなっています。
また、上場時の「目論見書」によると、クラシコムのビジネスモデルは、D2Cおよびブランドソリューションといった事業を支える基盤として「カルチャーアセット」、さらにその下に「エンゲージメントアセット」を備えている、としています。
エンゲージメントアセットは、SNSプラットフォームで顧客層にアクセスする「EARNED CHANNELS」と、メルマガや自社サイトなど自社プラットフォームで顧客層にアクセスする「OWNED CHANNELS」の2本立てで展開しています。
カルチャーアセットは、コンテンツとブランド、そしてデータで構成されています。これらアセットを効果的、効率的に活用することで、広告費を必要としない高利益率のビジネスが確立できていると見られます。
クラシコムがユーザーに提供しているコンテンツは「商品とそれにまつわるユーザー体験」のほか、ECで取り扱っている商品について、バイヤーやプランナーが込めた想いを紹介するもの。ほかに、スタッフが自身の生活について綴るコラムなどの「読み物」を月間100本程度サイトに掲載しています。
さらには、短編ドラマ「青葉家のテーブル」(後に長編映画化、劇場公開)や「ひとりごとエプロン」(後にDVD化)、Podcast「日曜ラジオ チャポンと行こう!」など自社コンテンツを制作・提供するだけでなく、海外映画祭で買い付けた映画「離ればなれになっても」の全国劇場公開など新たなビジネスも展開しています。(こたつ経営研究所)