厚生労働省は2022年12月16日、令和4年の「高年齢者雇用状況等報告」(6月1日現在)を公表した。それによると、65歳までの雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%だったものの、65歳定年企業は中小企業で22.8%、大企業で15.3%と低水準にとどまっている。
企業に義務付けられる「定年制の廃止」、「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」いずれかの措置
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では、企業に「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」(高年齢者雇用確保措置)のいずれかの措置を65歳まで講じるよう義務付けている。
さらに、2021年4月1日からは70歳までを対象として、「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」という雇用による措置や、「業務委託契約を締結する制度の導入」、「社会貢献事業に従事できる制度の導入」(高年齢者就業確保措置)という雇用以外の措置のいずれかの措置を講じるように努めることを義務付けている。
今回の集計結果は、従業員21人以上の企業23万5875社からの報告に基づき、高年齢者の雇用等に関する措置について、2022年6月1日時点での企業における実施状況等をまとめたものだ。
詳しく見ていくと、雇用者が31人以上の企業で60歳以上の常用雇用者数は、増加の一途をたどっている。2009年には216万人だったが、2022年には441.7万人と倍以上に増加した。(表1)
それによると、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は23万5620社と99.9%となり、前年比0.2ポイント増加した。企業規模別では、中小企業が前年比02ポイント増加して、99.9%となったことが大きい。(表2)
常用雇用者数は65歳以上200.9万人、70歳以上81.1万人...右肩上がりに増加
高年齢者雇用確保措置には、「定年制の廃止」「65歳定年」「継続雇用制度の導入」の3種類がある。
このうち、「継続雇用制度の導入」は、雇用の上限年齢を65歳以上としているものだ。ところが、60歳で定年退職をしたうえで再雇用契約や業務委託契約などを結ぶため、定年制の廃止や、65歳定年が正規社員として60歳から65歳の間を雇用されるのに対して、事実上の非正規雇用者となる。したがって、待遇・処遇や雇用条件は悪化し、雇用は不安定になる。
この継続雇用制度の導入について、報告書によると、70.6%と前年比で1.3ポイント減少してはいるものの、65歳定年は22.2%と同1.1ポイントの増加にとどまっている。徐々に増加しているものの、未だに全体の2割程度しかないのが現状だ。そのうえ、定年制を廃止している企業は3.9%と前年比で0.1ポイント減少している。(表3)
2021年からスタートした70歳までを対象とした努力義務では、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は前年比で2.3ポイント増加している。だが、この数字は、全体の27.9%と3割に満たず、このうち継続雇用制度が前年比2.1ポイント増加して21.8%を占めている。70歳定年は同0.2ポイント増加の2.1%しかない。
70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度、および、70歳まで継続的に社会貢献事業(事業主が自ら実施する事業または事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う事業)に従事できる制度である創業支援等措置は、前年比横ばいの0.1%でしかなく、まったく活用されていない状況だ。
66歳以上の高年齢者雇用確保措置が進んでいないことで、31人以上の企業で65歳以上の常用雇用者数は200.9万人と、60歳以上の441.7万人の半分に満たない。70歳以上では81.1万人と5分の1に満たない。(表4)
それでも、65歳以上の常用雇用者数は2009年の60.6万人から3倍以上も増加、70歳以上も2013年の18.0万人から4.5倍も増加している。
これは、これまでにも何度も取り上げてきたが、高齢者の労働意欲が高いだけではなく、生活保護受給世帯の50%以上が高齢者世帯であるように、高齢者が年金だけでは生活を維持できないという貧困状態にあることの表れでもあり、高齢者の雇用対策は急務といえる。