いくつかの誤解を正す
かなり専門的な内容を含むので、読んでもただちに理解できない項目も多いが、「他行では1990年代に改めた仕様」「アプリのエラー設計に問題あり」「緊急事態の『司令塔』に情報届かず」などの指摘を読むと、「なるほど」と納得するだろう。
なぜ、みずほ銀行でシステム障害が続くのか?
検査に入った金融庁は、直接的な原因とその背景、それらの事象を生み出した「真因」に分けて分析。「真因」を4つ挙げている。
1 システムに係るリスクと専門性の軽視
2 IT現場の実態軽視
3 顧客影響に対する感度の欠如、営業現場の実態軽視
4 言うべきことを言わない、言われたことしかしない姿勢
これらは報道され、特に4つ目の消極的な姿勢については記憶している人も多いだろう。
本書の読みどころは、第5章「障害を繰り返す みずほ銀行のシステム、その歴史を紐解く」にあるだろう。合併以来のシステムの歴史を振り返るとともに、いくつかの誤解を正している。
たとえば、新システム「MINORI」について、一部で「旧3行のシステムをつぎはぎした」ものであるかのように論じられているが、誤解だとしている。要件定義からやり直して、コードを新規開発したという。従来のコードの再利用もしていない。
また、「旧3行どこか一つの勘定系システムに片寄せしなかった」ことが問題だという指摘に対しては、さまざまな事情があったと説明している。
旧みずほコーポレート銀行のものは、大企業向けの取引に特化したシステムであり、旧みずほ銀行が扱う個人や中小企業向けの取引には向いていなかった。
一方で、旧みずほ銀行の「STEPS」は、システムの老朽化が著しく全面刷新が必要だった。また、STEPSが富士通製メインフレームで稼働することも問題だった。富士通がメインフレームの製造・販売をいずれ終了することは予見されていたからだ(2022年に正式発表)。つまり、STEPSへの片寄せも不可能だった。