FRBを待つ「罠」は、「不況の恐怖」と「時間との戦い」
FRB(米連邦準備制度理事会)の舵取りが、景気減速に進む米国経済の行方を左右する重要なカギになるが、「多くの罠が待っている」と指摘するのは、みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部プリンシパルの小野亮氏だ。
小野氏のリポート「中央銀行の苦悩 試練の時を迎える2023年」(12月22日付)では、第一の罠は「不況の恐怖」だと指摘する。
「2023年の米国経済には厳しい引き締めによるハードランディングが待っているとみられる。景気や雇用の悪化が現実になれば、国内世論や政治家をはじめとして、FOMC内でもハト派を中心に『行き過ぎた利上げ』を修正すべきだとの声が強まるだろう」
目先の失業に対する恐怖が、現在あるいは将来のインフレに対する恐怖よりも経済政策立案を支配するようになるからだ。小野氏はこう指摘する。
「かつてグリーンスパン議長下のFRB(1987~2006年)が進めた利上げとソフトランディングの成功が、サブプライムローン問題の新局面を生むきっかけとなったことはあまり知られていない」
不況を恐れるあまり、早めの金融緩和でソフトランディングを果たした結果、リーマンショックを引き起こす結果になった、というわけだ。
もう1つ小野氏が指摘する罠は「時間との戦い」。米国では翌年(2024年)に米大統領選を控えている。そのため、FRBのインフレとの戦いはそれまでに終わらせることを求められるから、まさに「時間との戦い」になるのだ。
「不況」か「インフレ」か、「物価安定」か「雇用重視」か、といった難しいパラドックスに二者択一の選択を迫られるうえ、時の政権からの重圧が加わる可能性もある。それだけに小野氏は、
「2023年、欧米中央銀行の苦悩は一層深まるとみられる」
と共感を寄せている。