歳出削減など耳が痛い話題からは顔を背ける...政治の無責任
もっとも、最大の問題は、防衛費増額の財源がいまだ不明確なことだ。
政府・与党は2022年末の税制改正議論で、防衛費増額の財源に、法人税、所得税、たばこ税の増税で対応する方針を23年度税制改正大綱で示したものの、引き上げ時期の明記は見送られた。
23年度以降の税制改正議論で増税に向けた道筋を具体化するというが、国民受けの悪い増税には自民党内などの反発が強く一筋縄ではいかない。
新設の防衛力強化資金に充てた国有財産の売却なども、あくまで一時的な収入に過ぎず、安定財源とはとても言えない。それも27年度までの5年間分を決めただけで、その先の見通しは立っていない。
「防衛費増額の財源が不足すれば、国債発行でまかなうしかなくなる。それだけでは何としても避ける必要がある」
政府関係者はこう指摘するが、23年度当初予算でさえ、本来は他の事業に充てるべき財源をかき集めて、何とか体裁を整えたに過ぎない。岸田政権は財源が固まらないまま、防衛費増額へと見切り発車したのだ。
「社会保障費に、防衛費増額が加わり、歳出の拡大は確実に新たなステージに突入した」
財務省からはこんな声が聞こえてくる。
当初予算の止まらない肥大化は、国民受けのいい政策に熱を入れ、歳出削減など耳が痛い話題からは顔を背ける政治の無責任体質の象徴といえそうだ。(ジャーナリスト 白井俊郎)