強い逆風の中でも、日本経済が腰折れしない5つの理由
一方、こうしたリスクがあるものの、やや楽観的に見ているのが、伊藤忠総研のチーフエコノミスト武田淳氏と、副主任研究員中浜萌氏の2人だ。
2人がまとめたリポート「日本経済2022年の回顧と2023年の展望-日本経済情報2022年12月号」(12月21日付)によると、「2023年は、物価上昇と海外景気悪化という強い逆風の中で、景気腰折れを回避し、経済活動の正常化と安定成長によるデフレからの完全脱却に挑戦する年となる」という。
そして、伊藤忠総研では以前から「景気が腰折れしない5つの理由」を挙げており、それが大筋で今回も当てはまる状況だというのだ。その5つの理由とは、これだ。
(1)欧米に比べ、脱コロナに出遅れているから、逆にコロナ禍からの需要回復の余地が大きい。
(2)欧米に比べ、インフレ率が低い。
(3)日本銀行が金融緩和を継続している。
(4)企業の姿勢が前向きである。
(5)インバウンド需要の回復しつつある。
これらの5つを改めて点検すると、(1)はやっと水際対策を緩和したばかり。(2)のインフレ率は、足元で高まっているが、今後は鈍化して賃金の上昇でおおむねカバーできる。強制貯蓄もあり、個人消費は拡大を維持している。
問題は(3)の日本銀行の金融緩和の継続だ。12月20日に日本銀行は政策決定会合で、長期政策金利を事実上引き上げたため、継続の可能性が低下した。しかし、(4)の企業の姿勢は、人手不足が極まり設備の不足感も確認され、雇用や設備投資の拡大積極化が期待できる状況。(5)のインバウンド需要は訪日外国人の数が増えている。
このように、日本銀行の想定外の金融政策変更と、不透明感を強める海外景気という懸念材料が加わったが、なにより岸田文雄政権がまとめた、総額29兆円の2次補正予算で具体化した大型の「総合景気対策」の下支えが大きいという【図表3】。
リポートは、こう結んでいる。
「デフレ脱却に必要な需給ギャップの解消は、2024年に入ってからとなる可能性が高いが、2023年終盤には需給ギャップの縮小が続く下で、賃金上昇の後押しもあり一定の物価上昇が続くと予想される。2023年は、デフレからの完全脱却が展望できる年となりそうであるが、金利の本格上昇に備えるべき年とも言えよう」