「ゾンビ企業」という、おどろおどろしい名の会社が日本の企業になんと1割以上おり、年々増加しているという――。
帝国データバンクが2022年12月26日に発表したリポート「特別企画:『ゾンビ企業の現状分析』(2022年11月末時点の最新動向)」で明らかになった。
「ゾンビ企業」とはその名のとおり、「生ける屍(しかばね)」と化した、事実上経営破綻している企業のこと。そんな企業があちこちに「徘徊」して、日本経済は大丈夫なのだろうか。
いくら稼いでも、どんどん利息の支払いに追われる「ゾンビ企業」
「ゾンビ企業」(Zombie company)はバブル崩壊後、企業の過剰債務と金融機関の不良債権問題が深刻化した1990年代後半に生まれた言葉だ。各国の中央銀行相互の決済を行う国際決済銀行(BIS、本部スイス・バーゼル)では、「ゾンビ企業」をこう定義している。
「設立10年超で、3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオが1を下回る企業」
「インタレスト・カバレッジ・レシオ」(1CR)とは、利払い負担に対する利益の比率のことで、会社の借入金の利息の支払い能力を測る指標だ。ざっくり言うと、借金を払えるかどうか、企業の信用力を図るもので、次の数式で表される【図表1】。
《インタレスト・カバレッジ・レシオ=事業利益(営業利益+受取利息+受取配当金)÷金融費用(支払利息+割引料)》
一般的に、倍率が高いほど、財務に余裕のある健全企業とされる。だが、この値が「1未満」になったら、分子の「利益」より分母の「利払い」のほうが大きいことになる。いくら稼いでも、どんどん利息の支払いに追われるだけで、いずれ破綻することは間違いない。
帝国データバンクでは、この「ゾンビ企業」の定義を使って、自社が保有する企業財務データベースから、該当する企業を洗い出した。すると、「3年連続インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が判明しており、かつ設立10年以上」の企業が、2021年度で9万4885社であることがわかった。
そのうち、「3年連続でICRが1未満、かつ設立10年以上」の企業は1万2256社ある。そして、その割合が「ゾンビ企業率」で、12.9%となった【再び図表1】。つまり、日本企業全体の約13%が「ゾンビ企業」と推計されるわけだ。その数、全国に約18万8000社。コロナ禍前の2019年より約4万2000社、約3割(28.8%)増えたことになる。
同様のやり方で算出した2007年度以降の「ゾンビ企業率」の推移を示したグラフが【図表2】だ。
これを見ると、2008年秋のリーマン・ショック以降、「ゾンビ企業」の比率が年々上昇し、2011年度には19.8%とピークに達した。これは同時期に、全国の企業倒産件数が年間1万数千件に達するなかで導入された中小企業金融円滑化法によって、延命した企業が多かったためだ。
その後、2015年度以降は10%前後で推移したが、2020年度は11.4%と、2019年度の9.9%から1.5ポイント上昇した。コロナ禍の無利子無担保の「ゼロゼロ融資」をはじめとするコロナ関連融資などがその一因と考えられる、と帝国データバンクは指摘する。