非正規雇用者の組合加入が増える...推定組織率は8.5%と、まだ低いのが実情
一方で、組合数が減少を続けているのに対して、組合員数が小幅な減少にとどまっている背景には、「大幅に増加した非正規雇用者」が組合に加入していることがある。
2017年に120万8000人だったパートタイム労働者(非正規雇用者)の組合員は、2022年には140万4000人まで増加した。5年間で19万6000人(16.2%)も組合員が増加しているのだ。
全組合員に占めるパートタイム労働者組合員の割合も2017年の12.2%から、2022年には14.1%に増加している。もっとも、それでも、パートタイム労働者の推定組織率は8.5%に過ぎず、組合に加入しているパートタイム労働者は10人に1人もいないのが実情だ。(表3)
そして、労働組合の性質も変化した。
かつては、経営者と労働者という対立構造が労働組合運動にはあった。だが、それが徐々に、労働組合は組合役員が経営者側の意向に沿った人であったり、組合役員経験が「出世の手段」となっていたり、組合活動の経費の多くが会社の補助によるものになっているなど、自主性に欠ける「御用組合化」が進んだ。
労働組合法では、経営側の利益を代表する組合員の参加や、組合運営の経費の援助を適用外としている。したがって、御用組合化しようとする行為は、労働組合とは認定されず、不当労働行為として禁止されている。それでも、水面下では経営側の組合への関与は進み、組合と経営者の対立構造は崩れた。
加えて、個人の能力や実績が重視され、転職など人材の流動化が進んだことで、年功序列や終身雇用といった日本型経営が崩れ始め、労働者側の一体感が薄れたことも大きい。
さらに、長い年月をかけて労働関連法規は整備され、従来は労使間の争点であった所定外労働や休日労働、あるいは休暇制度、パワーハラスメントを含めたハラスメント問題等々、さまざまな問題が法律や制度化によって、解決されてきている点も影響している。
しかし、依然としてブラックと呼ばれる企業は存在しているし、さまざまなハラスメントや経営側による不当行為は行われている。
なにによりも、非正規雇用者が増加しているからこそ、労働者が基本的な人権と労働権のもとで雇用を守っていくためには、まだまだ、労働組合は重要な役割を担っている。