きっとどの映画も観たくなる!
作者のユーゴーは当初、本作の売れ行きを心配し、出版社に「?」とだけ記した問い合わせの手紙を出し、出版社の担当者からは「!」とだけ記された返事を受け取ったというエピソードが有名です。これは、世界一短い手紙であると言われています。
また、ユーゴーは文学以外でも、多くの功績を残しています。1845年には貴族院議員にも選ばれ、社会の改革、とりわけ死刑廃止を中心とする刑法の改善、教育制度の整備、そして下層の人々の生活改善に取り組みました。
1848年の2月革命によって発足したナポレオン三世の第二帝政のもとでは、パリ選出の市会議員として、政治に参画しています。さらには、1992年に実現したEC(ヨーロッパ共同体)の必要性を19世紀の半ばから訴えていました。文学のみならず、政治、福祉、そして宗教などの分野に大きな影響を与えたのです。
ユーゴーが1885年年に83歳で他界したときには、フランスで国葬が営まれました。フランス各地方、世界各国の代表、パリ市民などが参列したと伝えられています。その数なんと、200万人です。人類史上、最も参列者が多いとされる葬儀と言われているそうです。
――こういった内容が、本書「心ゆたかな映画 ハートフル・シネマズ」にはまとめられているとともに、著者独自の視点による考察が秘められています。時代背景や作品構成、登場人物の捉え方によって、作品はこんなにも広がりを見せてくれるのか、と驚くはずです。
映画の概略はもちろん、著者の視点から考察される映画のテーマ、裏テーマ、映画通の著者だからこそ感じるそれぞれの映画の魅力などが詳しく書かれています。読後はきっと、どの映画も観たくなることでしょう。(尾藤克之)