恒久化目指す出産家庭への「交付金」、毎年度1000億円規模に...24年度以降は、財源の当てがなく
社会保障をめぐる議論は、継続的に重ねられてきおり、今回の報告書は、そうした議論を集約したものといえる。
今回、「国の存続に関わる問題」と位置付けた少子化対策は、岸田首相が「子育て予算倍増」を掲げているだけに、最大の目玉になるはずだった。しかし、肝心の財源は「企業を含め社会全体で広く負担し支える仕組み」を検討するとしたのみで、先送りにしたことから、一気に色あせたかっこうだ。
年末までに決着しなければならない最大の課題が、防衛費。23~27年度の5年間で17兆円の増額を賄う財源の捻出に政府の力の多くが注がれ、「子育ての財源まで手が回らなかった」(政府関係者)。
象徴的だったのが、報告書にも盛り込まれ、実施が決まった出産家庭への10万円相当の「交付金」の財源だ。
首相は交付金を恒久化すると明言している。そのためには、毎年度1000億円規模が必要だ。23年度分は成立済みの22年度第2次補正予算などで賄えるが、24年度以降は当てがない。
一時は、与党を中心に防衛費に充てる増税に合わせ、交付金の予算も増税で賄う案が浮上した。しかし、並行して進んでいた23年度税制改正の議論が、防衛増税を巡って紛糾。
官邸では「防衛費でも拙速と言われているのに、子育て予算を上乗せするわけにはいかない」として、子育ては先送りの流れになった。「財源の当てなしにやれというのは、無責任のそしりを免れない」(厚労省筋)との正論は押しやられた。