再び値上がりだ――。東京都の私立中学校の来年度(2023年度)の初年度の学費(授業料、入学金、施設費と学則上のその他納付金)は、対象となった182校(休校中の学校等を除く)のうち、23.6%に当たる43校が値上げに踏み切ったことがわかった。
東京都が2022年12月7日に発表した。学費を据え置いた中学校は139校(76.4%)だった。初年度納付金(学費)の平均額は98万9125円で、前年度に比べて1万705円(1.0%)増えた。
来年度の学費、1万705円値上がり
東京都の私立中学校の初年度納付金(総額)が、再び値上げり基調で推移している。
これまでを振り返ると、10年前の2012年度の初年度納付金は、平均で92万3644円(184校)だった。その後は、8年連続で値上がり。
20年度に97万531円まで上昇した平均額は、その翌年(21年)度にはコロナ禍などの影響もあって、わずかに減った(97万176円)ものの、22年度は97万8420円と再び上昇した。来年度も1.0%、1万705円値上がりして、98万9125円となった。【下の表参照】
対象となった182校のうち、初年度の学費を値上げした学校は43校だった。
初年度の学費が最も高い学校は、玉川学園中学部(IBクラス)の190万6500円。次いで、ドルトン東京学園中等部が154万円、成蹊(国際学級)が149万6000円、慶應義塾中等部が142万円、早稲田大学高等学院中等部が141万4000円と続いた。
この内訳をみると、授業料で最も高いのは玉川学園中学部(IBクラス)の134万1000円。次いで、ドルトン東京学園中等部の93万円、慶應義塾中等部の88万円だった。
入学金で最も高いのは、頌栄女子学院の45万円、ドルトン東京学園中等部の40万円、広尾学園の38万8000。
施設費で最も高かったのは、本郷と国立音楽大学附属(演奏・創作コース)の20万円、日本大学第二の19万円、目黒学院、国立音楽大学附属(総合表現コース)の17万円だった。
一方、初年度の学費が最も低い学校は、八王子実践の54万8000円。次いで、サレジオの63万8000円、愛国の71万5000円、開智日本橋学園(LC・GLC・DLCクラス)の74万8000円、北豊島の76万2000円と続いた。
最も高い玉川学園中学部と最も低い八王子実践では、135万8500円もの差があった。
跡見学園29年、和洋九段女子、大妻中野は26年も学費据え置き
値上げ額(幅)の高い中学校(生徒の非募集校を除く)は、実践学園(リベラルアーツ・サイエンスクラス)で、27万8400円(値上げ率28.9%)だった。
次いで、日本学園の11万3600円(同14.5%)、清明学園の10万5000円(同13.5%)、実践学園(リベラルアーツ・サイエンスクラス以外)の9万9600円(同10.3%)、サレジアン国際学園世田谷(現:目黒星美学園)の9万円(同9.6%)となった。
一方、学費を長期間据え置いている中学もある。
来年度も、初年度納付金を据え置いた学校は全体の76.4%に当たる139校だった。ここ10年以上、初年度納付金を据え置いている中学校は40校。20年据え置いている中学校は14校だった。
このうち最も長いのは跡見学園の29年連続。続いて、和洋九段女子と大妻中野が26年連続、。川村、瀧野川女子学園、武蔵の3校が25年連続。女子学院と八王子実践が24年連続。立正大学付属立正が23年連続。日本大学第一が22年連続。共立女子第二と共栄学園が21年連続。立教女学院と城北が20年連続となっている。
近年、中高一貫の教育システムや教育の内容、進学への面倒見がいいことなどを理由に、私立中学は年々人気が上がっており、東京都の私立中学を受験する子どもは増えている。子どもを私立中学に進学させるため、共働きなどで高い収入を得る世帯も少なくない。
そうしたなか、私立中学には教師を高給で雇うなどで優秀な人材を確保して教育の質を高め、他の中学と差別化したいとの思いがある。
こうした背景から、教育の質の向上をねらいに値上げしやすい環境が整いつつある、とみられる。コロナ禍による行動制限などが緩和されるなどで、私立中学の学費も再び増えていくかもしれない。