「悩みの底なし沼」から抜け出すには、どうしたら?【尾藤克之のオススメ】

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   アウトプットの、その先へ――。自分の言葉で、人生を動かせ! 精神科医として30年の経験と、YouTubeで4000超の悩み相談に答えてきた著者・樺沢紫苑さんによる、集大成の一冊です。人気精神科医が贈る、悩み解決本となっています。

「言語化の魔力」(樺沢紫苑著)幻冬舎

悩みは「人生のスパイス」である

   想定以上のストレスやパニックになると、頭が真っ白になり、何も考えられなくなることがあります。さらに、「ワーキングメモリ(作業記憶、脳の作業領域)」も低下して、思考停止に陥ることも。樺沢さんは「悩みの底なし沼」へと沈んでいくと表現しています。

「陸上競技に『ハードル走』という種目があります。ハードルがなければ、あの競技の面白さはなくなりますし、そもそも成立しません。生まれてから死ぬまでの間に、一度も悩まない人生などありません。そんな人生は、実に味気ないものです。人生においても、ハードルは必ず現れます。重要なのは、ハードルの前で立ち止まらないこと。もしくは、ハードルでコケて怪我をしないことです」(樺沢さん)
「ハードルが現れたら、ポーン、ポーンとリズムよく飛び越えていけばいい。ただし、飛び越えるのには技術を必要とします。ストレスやネガティブ感情を処理して『スルーする技術』、そして立ち止まらずに前に進む『心のしなやかさ(レジリエンス)』。それらを体得することが大切です」(同)

   たしかに、私たちの人生に試練はつきものです。「悩み」「困難」「トラブル」は、いつ襲ってくるかわかりません。このような出来事を乗り越えてこそ、人は成長できるのでしょう。困難もなく、心配事もなく、順風満帆に人生を歩んでいる人など、いないはずです。

   ピザに数滴のタバスコをかけたり、スイカに塩をふったりすると、味がひきしまり、おいしくなることはよく知られています。樺沢さんは、次のようにも言います。

「かけすぎると辛くて食べられなくなりますが、適度な辛みは人生をひきしめ、より豊かなものにするのです」

成長には「きつい」も必要だが、「ガス抜き」も大事

   筋トレとは、日常生活ではかからないウェイト(重さ)の負荷を加えて、身体の筋肉を鍛えることです。樺沢さんは、「悩みを抱えている間は『心の筋力トレーニング』の真っ最中だと考えることもできる」と指摘します。どういうことでしょうか。

「負荷のかかる重さでなければ、トレーニングの効果がないことは言うまでもありません。楽なトレーニングでは、筋肉がつかないのです。『悩み』の最中にある人には、『苦しい』『つらい』という負荷がかかっています。しかし、それを乗り越えた時に、大きな成長が得られます」(樺沢さん)
「ボスキャラを考えてみてください。手強い相手ですが倒すことでファンファーレが鳴って『重要なアイテム』『たくさんのゴールド』『より強い武器、防具』『たくさんの経験値』が手に入り、主人公は次のステージへ進むことができます。『きつい』から成長する。『楽』なことだけしていても、自己成長はありません」(同)

   そのように考えることで、「つらい」「苦しい」も必要な経験になる、と樺沢さんは言うのです。むしろ大歓迎すべきものだ、と。しかし、一歩踏み出そうとすると、苦しかった日々がトラウマのようによみがってしまい、辛くなることがあります。そんな時には、ガス抜きをすることです。他人に話すだけで、悩みは解決するからです。

   また、「規則正しい生活」を送るようにつとめましょう。あなたは、ちゃんと睡眠がとれていますか? 規則正しい生活は、豊かな人生を歩めるキッカケになるような気がします。(尾藤克之)

尾藤 克之(びとう・かつゆき)
尾藤 克之(びとう・かつゆき)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。著書は『最後まで読みたくなる最強の文章術』(ソシム)など19冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も連載中。
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