ウーバー配達員、都労委は「労働者」認定...団体交渉求める権利あると判断 立場弱いフリーランスの地位向上につながるか?

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   宅配代行サービスのウーバーイーツの配達員は「労働者」――東京都労働委員会(都労委)が2022年11月、そんな決定を出し、波紋が広がっている。ウーバーイーツを運営する日本法人に対して、国内の配達員らで作る労働組合「ウーバーイーツユニオン」が求めた団体交渉に応じるよう命令したのだ。

   配達員はウーバー側に雇われている従業員ではなく、ウーバー側と個別に契約している「個人事業主」。こうした組織に所属せず仕事を請け負う「フリーランス」と呼ばれる働き方が増える一方、その立場の弱さが問題になっており、今回の決定はフリーランスの地位向上の第一歩になるか、注目される。

  • 今後、配達員の働き方、待遇はどうなる?(写真はイメージ)
    今後、配達員の働き方、待遇はどうなる?(写真はイメージ)
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配達員の組織体制、契約内容などを判断基準に検討

   労働組合法では労働者を「職業の種類を問わず、賃金、給料などで生活する者」と定義されている。そのため、組織として団体交渉する権利(団交権)を得るには、配達員が法的に「労働者」に該当すると判断される必要がある。

   単純には比べられないが、たとえば、「セブン―イレブン・ジャパン」の岡山県のフランチャイズ店の店主たちがセブン本部との断交を求めた問題では、岡山県労働委員会が2014年に交渉に応じるよう命じた。だが、その後、裁判に持ち込まれ、2022年12月22日、東京高裁が団交権を認めないとした一審判決を支持し、店主側敗訴の判決を言い渡した。店主は労働者とは認められない、という判断となった。

   今回のウーバーをめぐる問題は、労組側が2019年10~11月、ウーバー側に対し、配達中の事故の際の補償などについて団体交渉を申し入れた。これに対し、ウーバー側は「労働組合法上の労働者でない」と団交を拒否したため、労組側が2020年3月、不当労働行為だとして、都労委に救済を申し立てていた。

   都労委は、(1)配達員が事業組織にどの程度組み入れられているか、(2)契約内容が一方的で定型的な決定か――などを基準に検討した。

   その結果、(1)については、配達員が飲食物を注文者に配達する割合が、注文全体の99%を占めていること。そして、評価制度や(配達員の)アカウント停止措置等により行動を統制し、配達業務の円滑かつ安定的な遂行を維持していることから、「事業は(配達員の)労務提供なしには機能せず、不可欠な労働力として確保されていた」と認定。

   さらに、(2)についても、配達員が注文を受けるアプリには配達が完了すると配送料が表示されるものの、運営法人が決定する金額以外の選択肢が表示されないことなど、個別に交渉できるような仕様になっていないとして、「対等な関係性は認められず、会社らが一方的、定型的に決定している」などと判断。

   これらの点から、配達員は労働組合法上の労働者に該当すると結論付けた。

   ウーバー側は、都労委の決定を不服として、12月7日付で、中央労働委員会に再審査を申し立てた。中労委の判断によっては、裁判に発展する可能性もある。

   ウーバーイーツは2016年に東京都内でサービスを開始。22年1月の発表によると、全国の登録店舗数は15万店を超えた。配達員は全国で13万人以上いるといい、業務する時間帯や場所は自由で、依頼を拒否することもできるものの、収入が少なく不安定な働き方を余儀なくされる人は少なくない。

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