日本だけが苦しむ「2つの病」
そんな世界において、日本だけが取り残されている。2022年の世界のインフレ率ランキングで、日本は0.984%とIMF(世界通貨基金)加盟192カ国の最下位なのだ。それは輸入物価の上昇分を国内価格に転嫁しきれていないことを示している。
エネルギー関連の「急性インフレ」と「慢性デフレ」という2つの病が同居するのが、日本の特別な状況なのである。
日本では、「値上げ嫌い」と「価格据え置き慣行」が当たり前になっているが、今回のウイルスがもたらした事態はある意味で「チャンス」とも、渡辺さんは考えている。
凍りついた賃金というハードルを乗り越え、慢性デフレからの脱却を果たせるのか、日本は大きな岐路にある、とむすんでいる。(渡辺淳悦)
「世界インフレの謎」
渡辺努著
講談社現代新書
990円(税込)