「黒田ショック」第2弾、市場が戦々恐々する「隠し玉」とは エコノミストが指摘...事実上利上げは黒田氏と日銀執行部との妥協か、再び急激な円高リスクも

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

黒田氏の「隠し玉」は、金融正常化への第一歩か

kaisha_20221226172749.jpg
どうなる日本経済?(写真はイメージ)

   一方、一度ウソをついて市場を裏切った黒田総裁は、逆に前言を翻すことの弊害が少なくなったので、「任期終了前の2023年1~4月に、再び隠し玉を仕掛けてくる可能性がある」と指摘するのは、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏だ。

   熊野氏はリポート「日銀はまだ仕掛けてくるか?~2023年1~4月の政策展望~」(12月23日付)のなかで、これまで「利上げはしない」と説明しながら、「事実上の利上げ」を行い、会見では「利上げではありません」と申し開きをした黒田総裁の言動を、経済学の上では「時間非整合問題」になる、と説明する。

「長期的な利益のために政策運営をしていると、短期的な利害と対立する状況が起こる。その利害対立によって、政策当局者はどこかの時点で、意見をひっくり返す行動を採らなくてはいけなくなる。金利を上げないというコミットメントは、短期的には投資家に安心感を与えるが、長期的に副作用を大きくする。どこかの時点で必要だった修正を、黒田総裁は今行ったのだ。
その弊害は、一度約束を破ると、次からコミットメントを投資家が信じなくなることだ。黒田総裁の言葉に信用がなくなり、皆が疑心暗鬼に陥る。これは現在起こっている混乱そのものだ」

   さて、今後、信用がなくなった黒田総裁はどんな手を打ってくるか。

「筆者(=熊野氏)は、なぜ今、君子豹変したかと言えば、次の日銀総裁がやりにくい課題を自分の任期中に片づけて置こうとしているからだと考える。明確な出口戦略に1~4月の短期間で着手することはないとしても、いくつかの課題にトライすることはあり得る。
例えば、物価が安定的に2%を超えているかを検証する『検証』、『再検証』、『点検』といったことを試みる可能性はある。1月の(政策決定)会合では、『3月に検証を行う予定です』とアナウンスしておいて、3月に検証を実施する。自分の退任前に検証をすることは、何の違和感もない。自分自身の花道にもなる」

   この「検証」は、前述の野村総合研究所の木内氏が指摘した「2%の物価目標の位置づけを、長期目標より現実的な目標に修正する」ために不可欠なもの。つまり、金融正常化への第一歩だ。それに黒田氏は挑戦する可能性がある。

   その結果は、日本経済にどんな影響を及ぼすか。

「もしも、1~4月に隠し玉を黒田総裁が投げてくると、為替レートはより円高に振れるだろう。筆者の計算では、日本の長期金利がプラス0.25%上昇することで、ドル円レートはマイナス3.92円ほど円高になると推定する。
もっと長いスパンで考えると、近々発表される次期日銀総裁が、現在のボードメンバーから選ばれる場合、長期金利上昇の容認へとさらに進む可能性を意識することになるだろう。すると、現在のドル円レートの変動は、さらに円高方向に向かう。2023年1~4月は1ドル127~128円まで円高に振れる可能性はあるだろう」

   この急激に振れる円高が、「黒田ショック第2弾」というわけだ。それはそれで、日本経済の一大事である。(福田和郎)

姉妹サイト