メディアの関心は「後任は誰?」、マスク氏も「引継ぎモード」?
投票で「ツイッター社の経営を退くべき」との「判決」を受けたにも関わらず、「俺が改革をしなかったら、会社は『dead』(死んでいた)」とまで豪語するマスク氏。前述の発言を見る限り、お騒がせ男を返上して、経営を立て直した「救世主」としてブランディングに軸足を移しているようです。
マスク氏はツイッター社を買収後、8000人いた従業を2300人までにリストラ。強烈なリーダーシップを発揮して、コントロール不能だった会社のかじ取りに成功し、「うまくいけば、2023年度のキャッシュフローは収支トントンにまで持っていけるだろう」と成果をアピールしています。
さらに、ツイッター社の経営やサービスをめぐって何度も方針転換をしたことは、「誤りや奇妙に見えた」かもしれないが、すべて計算づくだと主張。「Not because I'm like naturally capricious」(私が気まぐれだからではない)と、世間の批判をかわすような発言も報じられています。
唐突に苦しい台所事情を暴露して、自身の経営手腕をアピールする姿からは、強烈な自己顕示欲が伝わってきます。その一方で、「ツイッター社の危機的状況は回避できた」「誰が経営しても大丈夫」といった「引継ぎモード」が背景に漂っている気がしてなりません。
マスク氏の「引継ぎモード」発言に呼応するように、メディアの関心は次のCEO予測に移っているようで、さまざまな候補者の名前が飛び交い始めました。
Who will replace Elon Musk as Twitter CEO?
(誰が、イーロン・マスクからツイッターCEOの座を引き継ぐのか?:米ビジネス誌)
候補者として、輝かしいキャリアを誇るIT業界のカリスマが名前を連ねるなか、トランプ前大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏の名前も挙がっています。確かに、カタールで開催されたワールドカップ決勝戦を観戦するマスク氏とクシュナー氏のツーショット写真が、世界中のメディアを驚かせたばかり。あながち根拠のないデマではなさそう?
もっとも、マスク氏の大胆なリストラでボロボロになったツイッター社を立て直すためには、内情をよく知り、クライアントとの関係を修復できる元社員しかいない、という専門家もいます。リストラされた元社員の劇的カムバックはあるのか...。年末年始も「ツイッター劇場」の幕は上がったままのようです。
それでは、「今週のニュースな英語」は、「replace」(交換、取り替え)を使った表現を紹介します。
Users could easily replace the battery
(そのバッテリーは簡単に取り替えられる)
Can eye drops replace glasses?
(目薬が眼鏡の替わりになるか?)
Who will replace Putin?
(誰が、プーチンの替わりになるか?)
かなり前のことですが、国際イベントの運営を担当していた時、イーロン・マスク氏をゲストスピーカーに招く、という企画に携わったことがあります。
今ほどマスク氏が有名でない頃でしたが、情報収集してわかったのは「マスク氏は誰にもコントロールできない」という事実。どこにいて、何を考えているか、側近でもわからないという評判で、日本に招聘するなど実現不可能な「夢物語」でした。
その後、あっという間に世界一の有名人になったマスク氏。彼が今後ツイッター社をどうするかは、「『彼』のみぞ知る」ことでしょう。(井津川倫子)