人が減っているのに残業時間上限規制で、さらに人手不足に
いったい、なぜ「悪化」すると見込む企業が増えたのか。企業からはこんな意見が聞かれた。
「電気代、燃料代の高騰が続くようであれば、製品価格の大幅な値上げは避けられない。しかし、原価上昇分のすべてを価格に反映できるわけでもないので、収益性は悪化する一方だろう」(舗装材料製造、群馬県)
「今後も景気が好転する材料がなく、依然として先行き不透明な見通しである。新型コロナ、ウクライナ危機、円安対策など、大きな社会不安が払しょくされれば好転していくように感じるが、それには相当な時間が必要」(食肉小売、東京都)
「原材料の値上げ・電気料金の引き上げで、値上げに踏み切ったものの、販売額は徐々に減少傾向にある。電気料金のさらなる引き上げも見込まれることから、製品の再値上げということになれば、景気はますます悪化するものと予想する」(水産食料品製造、茨城県)
「人手不足の解消策はなく、社員の高齢化が進んでおり、仕事はあるが受注できない状況に拍車がかかる。人が減っているのに残業時間の上限規制もあり、さらに人手が足りなくなっている。景気が良くなることはない」(塗装工事、山梨県)
こういった切実な声の数々が挙がっている。そして、政府の対策についてはこんな意見が寄せられた。
「個人消費の増加が第一歩と考えている。消費意欲の向上が図られない限り給付や所得を増やしても出し渋り、経済に回るキャッシュ増加が思うように見込めない可能性がある。短期的でもよいので、個人に係る税の軽減や一時的な消費税廃止、生活必需品価格に対する補助などを行い、消費型社会を構築することが長期的な景気改善に繋がるのではないかと考える」(土木工事、北海道)
帝国データバンクではこうコメントしている。
「2023年の景気は『悪化』局面と見込む企業が25.3%と前年から倍増した。特に懸念材料として『原油・素材価格の上昇』が突出して高くなったほか、『円安』や『物価上昇』をあげる企業が多かった。多くの企業では、これまでの新型コロナウイルスの感染拡大による需要減少への対応から、徐々に『原材料不足・価格高騰』を筆頭にした、その他諸問題への対応にシフトしていくとみられる」
「2023年は『原材料不足・価格高騰』への対応だけでなく、『個人消費』の復活に向けた政策がカギとなろう。引き続き企業にとっては、人手不足が続くなか原材料価格の高騰が重くのしかかり、政府には地政学的リスクも含め早急な対策が求められている。そして同時に、消費拡大に向けた個人の所得増加に資する政策も重要と言えそうだ」
調査は2022年11月16日~30日、全国2万6953社にアンケートをおくり、1万1510社から有効回答を得た(回答率42.7%)。そのうち大企業は1814社(15.8%)、中小企業は9696社(84.2%)だった。(福田和郎)