何かと「自分らしさ」を主張しがちなZ世代の若者。意外にも「出世」意欲が高く、「経営」に携わりたいと考える人が多いことがマーケティングリサーチの「アスマーク」(東京都渋谷区)が2022年12月16日に発表した「自主調査『世代による仕事意識の違い』」でわかった。
上司・先輩のあなた、Z世代の部下・後輩のやる気を引き出して、大いに活躍してもらうために参考にしてはいかが。
Z世代男性「収入が増えるなら、忙しくなってもいい」という人多い
アスマークの調査は、22歳から56歳までの正社員の男女、合計1200人が対象。それぞれ男女100人(計200人)ずつを次の3世代に分けて分析した。
(1)22歳~27歳(Z世代)=デジタルネイティブ。幼いころからスマホやSNSに触れ合ってきた世代。
(2)28歳~41歳(Y世代)=ミレニアル(新千年紀)世代ともいわれ、2000年代に入って成人を迎えた。バブル崩壊前後に生まれ、IT機器の拡大とともに育ってきた世代。
(3)42歳~56歳(X世代)=ポスト団塊ジュニア(42歳~47歳)、団塊ジュニア(48歳~51歳)、バブル世代(52歳~56歳)の3世代を含む。バブル崩壊頃から就職氷河期時代にかけて成人を迎えた世代。
調査ではまず、Z世代の仕事に対する意識を探るために、Y世代、X世代を同じ質問を試みて比較した。スキルアップや転職、出世など責任の増加に前向きがどうか、2つのタイプの質問を用意した。次の(A)が積極的、(B)が消極的な傾向を表わす内容だ。(A)と(B)のどちらに当てはまるかを5段階で聞いたのだ。
(A)
「積極的にスキルアップに取り組みたい」
「スキルアップしたいなら転職は必要だと思う」
「チャンスがあれば転職したい」
「収入が増えるなら、忙しくなってもいい」
「収入が増えるなら、責任が重くなってもいい」
「出世したい」
「経営に携わりたい」
「成果報酬が好ましい」
(B)
「必要がなければスキルアップに取り組みたくない」
「スキルアップのために転職が必要だとは思わない」
「一つの会社で長く働きたい」
「収入は増えなくても、忙しくならない方がいい」
「収入は増えなくても、責任は重くならない方がいい」
「出世したいとは思わない」
「経営に携わりたいとは思わない」
「決まった月給が好ましい」
そして、各世代の男女を比較した結果が【図表1】だ。これを見ると、Z世代(ピンク色グラフ)は、特に男性を中心に「Aの方があてはまる」の方向に振れやすく、「転職」や「出世」に前向きな考えが多いことがわかる。
Z世代男性は「収入が増えるなら、忙しくなってもいい」「出世したい」「経営に携わりたい」という質問項目では、他世代男女をグンと引き離す結果になった。
ややスコアは離れるものの、Z世代女性もおおむね似た傾向にあり、他世代の女性より「Aの方があてはまる」の方向に振れている。特に、「チャンスがあれば転職したい」という項目では、ほぼZ世代男性並みに意欲的だ【再び図表1】。
世代が上がるにつれて少なくなる「出世欲」と「経営欲」
次に、「転職への意識」を探るために、相反する傾向の質問項目を闘わせて分析した。(A)「スキルアップには転職も必要」VS(B)「スキルアップには転職が必要だとは思わない」と、(A)「チャンスがあれば転職したい」VS(B)「1つの会社で長く働きたい」の2つだ。
その3世代男女ごとの結果を比較したグラフが、【図表2】だ。これを見ると、転職に関する意識は世代間の違いが大きく表れた。若い世代ほど転職に肯定的で、チャンスがあれば転職したい、と前向きに考えていることがわかる。「スキルアップには転職も必要」と「スキルアップのために転職したい」と意欲的なのは男女ともZ世代がトップで、X世代が一番低い。
逆に、「1つの会社で長く働きたい」という、転職を引き留めるブレーキが若い世代になるほど弱まっており、Z世代男性で17.0%、Z世代女性では19.0%しかいない【再び図表2】。
では、Z世代が目指すキャリアプランはどういったものなのか。ここでも相反する傾向の質問項目を闘わせて分析した。(A)「出世したい」VS(B)「出世したいと思わない」と、(A)「経営に携わりたい」VS(B)「経営に携わりたいとは思わない」の2つだ。
その3世代男女ごとの結果を比較したグラフが、【図表3】だ。これを見ると、Z世代男性では「出世したい」「経営に携わりたい」という回答が、「出世したくない」「経営に携わりたいとは思わない」という回答を大きく上回り、他世代より突出して高くなっている点が目立つ。ただし、同じZ世代でも、女性の出世欲、経営者志向はあまり高くなく、ほかの世代の女性とほぼ同じだ。
また、面白いことに、ほかの世代の男性では「出世したい」「経営に携わりたい」という割合が、世代が上がるにつれて少なくなる。男性X世代で「出世したい」という人(28.6%)は、男性Z世代(52.0%)の約半分だ。「若い世代は管理職になりたくない人が多い」といった話をよく耳にするが、この調査では、真逆の結果だ【再び図表3】。
これは社会人歴が上がり、中堅社員になると、「会社の現実」が見えてくるということなのだろうか。あるいは、すでにある程度出世して現状に満足しており、それ以上を望まないということなのだろうか。
若い世代ほど、「終身雇用」より「ジョブ型雇用」望む
最後に、Z世代の雇用への意識を探るために、相反する傾向の質問項目を闘わせて比較した。(A)「ジョブ型雇用がよい」VS(B)「終身雇用がよい」だ。
ここでも世代間の意識の違いがあきらかになった。若い世代ほど終身雇用をよいと考える人が減少、ジョブ型雇用がよいと考える人が増加する傾向になった。【図表4】。
ただし、どの世代も「わからない」が最も多いという結果で、Z世代女性では5割弱を占める。ジョブ型雇用が進むといわれる現状を、それぞれの世代がどう感じているか、興味深いところだ。
アスマークの担当者はこうコメントしている。
「Z世代に着目しながら、キャリア意識、転職意識、雇用への意識を比較してみましたが、やはりX世代などのほかの世代と比べると理想の働き方における考えの違いが浮き彫りとなりました。特にZ世代男性で出世意欲が高いこと、スキルアップへの意識やジョブ型雇用を良いと考える傾向が強いことが印象的でした。
Z世代以外の人にとっては意外だったのではないでしょうか。 今回の結果から、若手にスキルアップできる環境を用意しなければ、転職につながるということが見えてきました。会社に長く勤めてもらうためにも、成長できる環境を追求していくことも重要な視点ではないでしょうか」
調査は22歳から56歳の正社員男女計1200人を対象に、2022年11月22日~11月25日にインタネットによるアンケートで行われた。(福田和郎)