「不合理な差別」のボーダーライン、どこに?
そうしたなか、雇用延長や再雇用した社員と正社員との待遇格差がトラブルになるケースが少なからず起こっている。労働基準監督署などへの労働相談も「ここ数年で増えてきているように思います」と、ある相談員は言う。
高齢者の継続雇用制度には、社員を定年退職させることなく、そのまま継続して雇用する「勤務延長」と、定年に達した社員を一度退職させ、その後新たに雇用契約を結ぶ「再雇用」の2通りがある。
勤務延長制度の場合、定年に達しても、そのまま雇用契約を継続するので、給与などの労働条件は変わらない。
再雇用制度は、定年に達した時点で退職となるため、いったん退職金を支給し、その後新たに雇用契約(多くの場合が契約社員、嘱託社員)を結ぶため、給与などの労働条件が変更される。多くの場合が「6割支給」「5割支給」と減額されている。
トラブルの原因の多くは、働き方と業務内容で生じる。勤続延長した社員や再雇用で有期契約を結んだ60歳定年を迎えた社員に、正社員と同じ業務内容なのに給与や待遇の格差があることへの不満だ。
前出の相談員は、
「とくに中小企業では、『管理職』の肩書を外したことを理由に給料を下げることがありますが、それにもかかわらず、与えられた仕事や責任は管理職のときと変わらないなどの、辞める前に示された業務内容と労働実態がかけ離れているとの訴えが少なくありません」
と話す。
最近は退職金制度がない企業もあり、「転職先を探すのが面倒だったり、(退職金がないことで)仕方なく働き続けたりする人もいます」(相談員)。ただ、こうしたトラブルはケース・バイ・ケースなので、「(違法性の)判断はなかなか難しいです」。判断材料は、その待遇格差に合理性があるかどうか、にあるそうだ。